これは認知症の異常行動だ!と決めつけて後悔した話

東京2週間、盛岡1週間という生活リズムで、遠距離介護を続けて8年目。ざっくり計算すると140往復、行き来しています。

最初は「東京3週間、盛岡1週間」、「 東京10日、盛岡10日 」など、いろいろなリズムを試してみたのですが、認知症の母に影響がないのが「 東京2週間、盛岡1週間 」だったので、これを数年継続しています。

ところが仕事の都合で、このリズムに狂いが生じることも。今月もそのパターンで、東京滞在が2日ぐらい多くなってしまいました。

ヘルパーさんや訪問看護師さんなど毎日誰か来てくださるので、それほど大きな問題はないのですが、このリズムが狂うと母にも異変が。わたしが家を見回すと、やはりおかしなところがいくつもありました。

黒のトレーナーが大変なことに!

最初に気づいた異変は、居間にある12月のカレンダーが破れていて、それを誰かがセロテープでつないでいたことです。昨年も全く同じことがあったので、またか!という感じでした。なぜか待てないという、ピックっぽさもあります。

カレンダーには母の予定が書いてあり、新聞やスマートスピーカーなどの情報と、カレンダーを照らし合わせて行動します。

季節も日付も曜日もわからない母ですが、わたしの工夫と母自身の工夫がマッチして、カレンダーのおかげでデイサービスの準備もなんとかできています。

次の異変は、ふとん。新しく買ったニトリのふとんは、やっぱり使ってませんでした。30年近く見慣れたふとんを敷くのは、しょうがないです。

わたしが居る1週間で使ってもらおうと敷きなおす日々ですが、ひとり暮らしに戻れば、昔のふとんを使うでしょう。それでも根気よくやっていけば、母も覚えてくれるかも・・・。

最後の異変は、わたしが黒いトレーナーを着ようとしたときのこと。思わず、なんじゃこりゃ!と、声を上げてしまいました。その時の写真がこちら。

謎のセロテープ

なぜだ?なぜ母は、黒いトレーナーにセロテープを貼りまくったんだ?

最初に思いついた理由は、破れたカレンダーをつなぐためにセロテープをいっぱい切って、それをトレーナーに貼ったと考えました。でも、意味が分からない。

次の理由は、トレーナーを破いてしまって、それをセロテープでつないだのかと。でも、トレーナーは破れてない。

全く理由が分からず、そっとテープをはがしてトレーナーを着ようかとも思ったのですが、きっと母にも理由があるのだろうと、興味本位で質問してみることにしました。

くどひろ
これ見て。なんで、セロテープがトレーナーにいっぱいついているの?
あら!ああ、デイサービスに持っていったときに、セロテープで付けたのよ
くどひろ
??? デイサービスに、息子の服は持っていかないでしょ?
じゃぁ、ヘルパーさんが来て、セロテープを貼っていったのよ
くどひろ
??? なんのために、ヘルパーさんがセロテープを貼るの?ヘルパーさんも関係ないでしょ?

母の取り繕いはいつものことなので、こうなると予想していましたが、それでも理由は分かりません。取り繕いのネタも出尽くした頃、最後に母がこういったのです。

トレーナーのゴミを取るために、セロテープを貼ったの

最後の言葉だけは、取り繕いではないと思いました。

というのも、母は1時間近く、服についた毛玉を取り続けることがよくあるからです。

また、自分で洗濯機に入れたトイレットペーパーや尿パッドを洗濯して、服についた紙くずを、延々と取る日もあります。

わたしが不在のときにきっと、黒いトレーナーとトイレットペーパーを洗濯したんだろうと。それをセロテープでキレイにしようと思い、途中で忘れて畳んでしまった結果のあの状態だと解釈しました。

正直なところ、わたしは認知症による異常な行動と、心のどこかで思っていました。あんなセロテープの貼ってあるトレーナーが突然出てきたら、誰だってびっくりすると思います。

それがまさか、息子のトレーナーをキレイにするための母親のやさしさだったとは・・・。

認知症が進行して、家の中はいろいろなことが起きてます。洗っていない食器が食器棚に入っているし、冷蔵庫に生ごみが入ってるし、トイレは汚すし、生乾きのまま洗濯物がしれっと畳んであるし・・・。

母を激しく責めるようなことはしていませんが、母はミスして当たり前、取り繕うのが当たり前と、介護生活の中で、そう考えるよう自分を仕上げてきました。当たり前と思っていれば、母を責める気にもならないし、自分もラクだからです。

ただ、そう自分自身を洗脳させ過ぎたせいか、まさかの母の正論に言葉も出ず、さすがに後悔しました。

何でもかんでも認知症の症状のせいにし過ぎてたよ、ごめん。

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

4件のコメント

 よくぞ,時間を掛けてご丁寧にお言葉を引き出されましたね。
 効率を度外視できない施設介護では,こうはいきません。
 お見事です。

くどひろ 様

ご無沙汰してます(*^^*)
140往復、マイルがついたらどんだけなんでしょうね。

お母さんの行動可愛いです。うちの母も色々とやってくれてました(笑)今すぐ思い出せるのは、冷蔵庫のチルド室にキレイにたたんだ布巾がズッパリ入っていたこと。 なんで入れてるのかなぁ~(T_T)と思いつつ面白くなってそのまま入れっぱなしにしてました。いつか取り出してくれることを期待して。

そんな母もこの11月に特養に入所し最初の頃は慣れなくて『帰りたい症候群』が出たらしいのですが、先日訪問したときには『音楽療法』の時間で、大きな声で体を揺らしながら民謡を必死に歌ってました(^o^) インフルエンザ予防で春まで会えないので、次に会うとき娘の事忘れてないかが心配〰️(;_;)

余計な話を書きましたm(__)m

奈都さま

マイルはつきませんが、えきねっとポイントがつくのでギフト券の交換はしてますよ。

インフルエンザ予防で春まで会えない特養もあるのですね。確かに少し会えない期間が増えるだけで、忘れてしまわないかな?と考えてしまいます。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか