京都認知症母殺害の話から飛躍して考えてみたこと

先日、認知症の講演会に参加して、2006年に京都で起きた認知症母殺害・心中未遂事件の裁判の動画を見ました。

Youtubeでも100万回以上再生されていてみなさんご存知かと思いますが、わたしは全く知らず初見でした。 4分強の短い動画でしたが、参加者の中で涙を流す方もいらっしゃって、何度も見たという方とお話もしました。

自分から助けを求められない介護者に目が届かない例ですが、こういう方に対しては特に行政や介護保険制度が行き届いて欲しいなと強く思った一方で、わたしは行政や介護保険制度に対して憤ることは、あまりしません。わたし自身は、助けを求められるからです。

なんだこの行政は、なんだこの制度は?とか思う事もありますが、そういったすごく遠いところへパワーを注ぐ事をしません。単純にもったいないからで、身近なところからパワーを注ぎたいと考えています。

ヘルプマンという漫画をたびたびブログでご紹介していますが、主人公の恩田百太郎(ももたろう)はとにかく熱い男で、仕事という枠を飛び越え、迷惑をかけるぐらい介護する家族へぐいぐい入ってきます。

「こんな人が身近にいたら、どれだけの人が救われるだろう」

漫画を読みながらそう思う一方で、現実世界でこういう方はなかなかいないだろうなとも思います。行政やサービスは何でも提供してくれるとも思っていなくて、”税金” と同じ考え方だと思っています。

「知っている人だけがトクをする」

というやつで、会社員の多くが確定申告を自分でしません。実際は申告すると税金が返ってくることがありますが、自分で調べて申告しないと戻ってきません。税金が安くなる制度はいろいろとあるし、ネットや公報などで提供はされているんですが、きっちり調べて得を取ってやろう!という人は少ないです。

この感覚が介護者にもあるよな・・・そう思っています。もちろん情報が取りづらいとか、そういうのが苦手という方が多いのは十分理解しつつも、自分から情報収集しようという気持ちは必要ではないかと。

税金には税理士がいるように、介護にはケアマネがいます。情報としてはいろいろ持っていても、介護する側から言われて気づくことも多いはず。そのためにも、介護する側も勉強が必要です。

介護する側は百太郎が、地域包括支援センターにいる!役所にいる!と思いがちな気がしていてならないのですが、そうは巡り合えないです。

京都の事件の動画を見て、人を殺す勇気や自殺する勇気ってどんな勇気よりもパワーいるよな・・・ばかり考えてました。それを実行するほどまでに追いつめられるというのは、よっぽどの事なんだろうと。 そういうよっぽどな状況にならないよう、さらに情報収集しないといけないなって強く思いました。

 


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか