認知症の母が大腸内視鏡検査を受けるまでとその結果

認知症 大腸内視鏡

母は2年に1回、盛岡市の無料がん検診(乳がん、肺がん、子宮頸がん)を受けています。大腸がんの検査は、いわゆる検便の提出だったのですが、認知症の母には難しい検査でした。

わたしは母がトイレに行くたびに、大か小かを尋ね、大と言ったら検便ケースを母に渡し、採り方を説明していました。検便ケースは茶色く濁っていたので、たぶん採れているだろうと思っていたのですが、かなり怪しいものでした。

次回からはわたしが便をネジネジしようと思ったのですが、どうせなら、わたしが今月受けた大腸内視鏡を受けちゃったほうがいいと思い、消化器内科を予約したのが今月の始めのことでした。

75歳で大腸内視鏡検査はやるべきか?

わたしが一番悩んだのは、75歳という高齢で大腸内視鏡検査をやるべきか?ということでした。

医師に相談すると、「人生で1回もやっていないのなら、やるべきでしょう」とあっさり回答をもらったので、3週間後に正式に予約を入れました。保険はきかず、2万円強かかりましたが、命には代えられません。

大腸内視鏡について、看護師さんから母にこんな説明がありました。

看護師
工藤さんは、今まで大腸内視鏡を受けたことはありますか?
わたしねぇ、絶対受けたことあると思うのよ
くどひろ
(スマホに認知症と入力した画面を、看護師さんにかざしながら)こういうことなので、おそらく受けてないと思います
いや、絶対受けたと思うわ

母の前では認知症と直接言わないよう6年やってきたので、病院ではこのスマホかざしを何度も行って、看護師さんの意思統一をはかりました。わたしからの説明を聞いた母は、すっかり大腸内視鏡を受けた気になっていたようでした。

検査前日の攻防

検査前日の食事は、朝はパン1枚、昼は具なしの赤いきつね、夜はおかゆとアイスで、お腹に残る野菜などはNGでした。

母は冷蔵庫をすぐ開けるので、透明なテープを冷蔵庫に貼りました。(下の写真)前回の抜歯の際、うがいするなという張り紙をよけ、うがいしてしまった実績があるので、今回はテープでシャットアウトしました。

そして、翌日に大腸内視鏡検査があるという張り紙を居間と台所に貼り、夜8時に下剤を飲んでもらい、それ以降は水だけになりましたが、なんとか物を食べさせずに済みました。認知症の母は、いくら口頭で言ってもすぐ忘れるので、こうするしかありません。

検査当日の動き

検査当日は、朝6時起き。朝食は食べず、タクシーで9時前に病院に到着しました。早速、下剤2リットルのうち、1リットルを1時間かけて飲むように看護師さんから言われました。

カーテンで仕切られた狭い部屋に3人の患者さんがいて、わたしのところだけ親子2人でした。会話はすべて筒抜けで、母が「ここはどこなの?」「なんの検査なの?」という質問をエンドレスにしてきて、それをわたしがまともに回答するというやりとりを、きっとカーテン越しにニヤニヤしながら聞いていたと思います。

下剤は2リットルと重く、母は手が不自由なのでうまくコップに注げないし、何杯飲んだのか、1時間で1リットルの意味も理解できないので、結局わたしがつきっきりになりました。

母はなぜか絶好調で、35分くらいで下剤1リットルを飲んでしまいました。トイレで便を出してもらい、すごく順調に見えました。わたしも1時間経ったら看護師さんにお任せし、外で自分の仕事をするつもりでした。再び母のお腹がグルグルなったので、すぐ横のトイレに行きました。しかし・・・

介護者あるあるですが、便座まであと1歩のところで、ズボンを履いたまま下痢・・・。生まれて初めての下剤の感覚で、我慢できなかったのだと思います。検査のことも、下剤を飲んだこともすぐ忘れてしまうため、やむを得ません。

靴、靴下、ズボン、パンツが便まみれになってしまいました。ナースコールボタンを押したら、看護師さんがやってきてくれて、ビニールの袋にこれら臭いやつらを入れてくれました。パンツは再起不能で、廃棄となりました。

1度出だすと、連続して出るようになります。結局、3つあるトイレのうち1個は、母が1時間占拠することになりました。便座に座りながら、トイレ掃除をして、なおかつ下剤も飲みます。その流れで検査着を着てもらい、便が透明になったところで、麻酔をして検査が始まりました。

検査の90分間、わたしはやっと自由になりました。そこでまず、くさいビニール袋をさらにビニールで包み、臭いが大丈夫なところでタクシーに乗り、20分ほどかけて自宅へ戻りました。若干におう気がしたので、タクシーの運転手にやたら話しかけて、ごまかしたのですが、うまくいったかな?

自宅に着き、におう靴を花王の『消臭ストロング』のトイレクイックルしかなかったので、念入りに拭きました。バッチリ臭いが取れ、やっぱりすごいと思いました。

次に靴下とズボンですが、お風呂場のシャワーでまず下洗いします。排水溝にたまった臭いやつを、ビニールの薄手の手袋をして取り、臭い消し袋『BOS』に入れて捨てます。こちらも優秀で、臭いはありません。その後はお風呂掃除。

下洗いした洗濯物もやはり、花王の『消臭ストロング』液体ジェルで洗濯機を回しっぱなしにして、再び病院へ戻ります。新しい靴、新しい靴下、パンツ、ズボンを持って、今度はバスに乗りました。(においを気にしなくていいのと、運賃節約)

前日は母と同じ、貧相なご飯しか食べてなかったので、駆け込むように久々のラーメン山頭火で、つけ麺を食べてから病院へむかいました。

病院に到着すると、検査が終わって麻酔で朦朧としている母がいました。検査着から持ってきた新しい服に着替えようということで、部屋へ移動しようとしたら、オムツから漏れたアレが床にポタポタと・・・検査中に、便を吸ったそうですが、下剤はまだまだ残っていて、またトイレで20分ほど母は格闘します。

あぁ、看護師さんごめんなさいと思いつつ、便が落ち着いたところで、新しいズボンや靴に着替え、30分ほど休憩したところで、いよいよ先生から検査結果を聞きます。

大腸内視鏡の検査結果は?

医師の診察室前には、共に大腸内視鏡を戦った戦友(60代くらいの女性)が待ってまして、

60代女性
あら、息子さん。偉いわね~。会社休んで、お母さんのために。わたしなんてひとりでやらなきゃだめよ

平日昼間に40男が病院をウロウロしてたら、そりゃ会社休んだって思いますよね。母はフリーランスのことは知らないので、適当に「はい、会社休みました」と返事しました。どうせウソつくなら「自転車で日本一周している途中です」って、言えばよかった。

結果は、ポリープが4個見つかりました。うち1個は5mm以上あって、良質なポリープですが、5年から10年後にガンになる可能性があるので、取っておいたほうがいいだろうと言われました。放置という手もあるよとも言われました。

うちは認知症のお薬としてプレタールを飲んでいるので、この血液サラサラの薬を飲むと、ポリープ切除ができません。これから冬がやってきますし、わたしも今は時間が取れないので、来春あたりに母のポリープ除去手術を総合病院で2泊3日で行いたいと思っています。猶予があって、助かりました。

医師も言ってましたが、とにかく大腸がんでなくてよかったです。女性のがん死因1位が大腸がんなので(乳がんではない)、大腸内視鏡を受けさせようと思ったのですが、早期に見つけることができ、本当に検査を受けてよかったと思いました。

この日は朝3時のけたたましい緊急地震速報のメール音に起こされ、4日連続で母を歯科、眼科、ものわすれ外来に連れて行ったこと、家と病院の短時間移動、これですべて終わったという安堵感から、かなりグッタリしました。

そんな状態だからでしょう。帰宅途中で寄った衣料品店で、母の新しいパンツを4枚買ったのですが、何も考えず堂々と女性下着売り場で母と「Lサイズじゃなくって、M!」「いや、わたしはLだって」とか言い合ってました・・結局、答えはMサイズなんですが。店の出口で、40男が女性下着売り場にいる違和感にあとで気づきました。パンツのサイズより、まずそっちだろ。

洗濯機を回したまま病院に戻ったので、洗濯物を干そうと思ったら、母のズボンに尿パットが入っていたみたいで、洗濯機の中が吸水ポリマーだらけになっていて、マジで凹みました。洗濯前に確認したはずなのに、どこに尿パットが?

洗濯物についたドロドロなポリマーを再びお風呂場で洗い流し、洗濯層を空回しでキレイにし、再び洗濯することになりまして、本当にお疲れな1週間が終わりました。もう1個大変だった緑内障の話も、今度書くかそれとも・・・親子とも大変な1週間だったので、帰京前の夕食はねぎらいの寿司にしました。なっとう巻の発祥と言われるお店のお寿司です。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

ウチも、つい先日区の検診に連れて行きました。で、やはり諦めたつつあるのが大腸がん健診…
日中は私が仕事の為、もしウンが出ても多分採取は不可能だろう、と。
この土日も出た?と聞いてもデナイ~、だし。
一回分でもいいんだけど‼ともう少し粘ってみます。それにしてもくどひろさんのお母様への愛がひしひしと伝わるわ~。
見習わなきゃ。

みどまるさま

うちも検便ケースだけもらって、提出できませんでした。それで大腸内視鏡にしたのですが、結果やってもらってよかったですよ!

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか