認知症介護をする人は「SOC理論」を覚えておくといいと思います!

SOC理論

今回も、新著に載らなかったボツネタを、ブログでご紹介します。

ポーランド出身の世界的ピアニスト、アルトゥール・ルービンシュタインをご存知ですか?1982年に亡くなっているのですでに30年以上経っているのですが、この方の晩年のピアニストとしての生き方が、なんともステキなんです。

ルービンシュタインについてYahoo!知恵袋にあった、こちらの質問を引用します。

「アルトゥール・ルービンシュタイン」て、『怪物ですか?』・・・賛辞の意味です!

彼が、齢88歳の時に演奏したグリーグの「ピアノ協奏曲 イ短調 作品16」、ショパン「ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 」、他(アンドレ・プレヴィン指揮、ロンドン交響楽団)の『DVD』を借りてきて見ました。

高齢にも係らず、テクニックに衰えが感じられず、演奏が素晴らしく、若々しい音色でした。
⇒手に震えも無く、よく手が回り、打鍵が強くてビックリしました。

80代後半でも、これだけ弾ける「ピアニスト」って、他におりますか?
引用元:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1044245915

要は、80代後半でも一流のピアニストであり続けたわけです。どうやったら80歳を過ぎても、一流の演奏活動を続けられるのか?「SOC理論」を使ったんだそうです。

S(選択):たくさんの曲目を演奏せず、絞る
O(最適化):若い頃よりも、十分に時間をとり練習をする
C(補償)速いフレーズの前をゆっくり演奏することで、より速く印象づける練習する

ルービンシュタインは、身体的な衰えを自分で理解し、若いときのような高い目標を持たずに、自分のできることに集中した結果、成功したのです。「SOC理論」は後付けかもしれませんが、実践したことは事実です。

  1. 目標を絞り込み(Elective Selection)
  2. 目標を切り替え(Loss-Based Selection)
  3. 最適化(Optimization)
  4. 補償(Compensation)

引用元:話が長くなるお年寄りには理由がある

この話は、認知症介護をする人も覚えておいて欲しいと思ったんです。

当たり前ですけど、人は年老いて、できないことが増えていきます。しかし、できないことを認めたくないので、若い頃の高い目標をいつまでも持ちたがります。

わたしもそろそろ老眼がやってきそうですが、「まだ見える!」と誰に対抗心を燃やしているのかよく分かりませんが、若い頃を目標に置いています(笑)まだ頑張れるうちはそれでいいのですが、80代になって「視力2.0を目指す!」と言ってケニアに行ったら、やっぱりおかしいですよね。(それもいいかも?)

実際、どの程度肉体的に衰えるのかは、そのときになってみないと分かりません。年相応に機能が衰えるとしたら、SOC理論で考えるのが、正解だと思います。

認知症介護で考えると、

介護者 = 認知症になる前のできるイメージや、若い頃のイメージが抜けきれない
認知症の人 = 消えゆく記憶と戦い、できないことも増えていく

ルービンシュタインのように考えるなら、認知症が進行したとしても、今できることに注力すればいいわけです。そりゃできないことは増えていきますよ、認知症であってもそうでなくても。それでもやれることはあって、できることに時間をかけ注力していけば、ルービンシュタインのように80代後半でもステキな曲は弾けるのです。

母も料理に関して、この法則を当てはめてます。わたしが帰省したときに食べる夕食のメニューは、まさにSOC理論です。(いっつも同じメニューです)まだ70代と若いので、多少はチャレンジ精神を持っています。でも、SOC理論は頭の中にあります。

この話いけるかなぁ・・と自分では思ったのですが、新著には載りませんでした。おそらくこのルービンシュタィンさんの例えが、読者には響かないと判断されたのでしょうね・・・

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか