認知症ケアの 「7つの大原則」 とは?

今回ご紹介する 「認知症ケアの7つの大原則」 は、「介護の現場からの視点」というのが特徴です。三好春樹さんの2冊の本が元ネタなのですが、三好さんは特養の理学療法士出身ということもあります。「医療」 から見た認知症ケアの本が多いので、「介護」からの視点は新鮮だし、われわれ家族にも身近です。

わたしの体験談に当てはめながら、7つの大原則を細かくみていきます。

環境を変えない

「入院が認知症をつくっている」 この一言が衝撃でした。病室の無機質な白い天井に囲まれ、自分確認のために動き出す。それを拘束され、信頼感を喪失しあっという間に目がトロンとなる。一夜にして認知症になる事もあるそうで、環境の激変はそれぐらい認知症にはよくないという原則です。

「転居」「部屋替え」「施設入所」「施設退所」 も認知症を悪化させる原因になります。

・できるだけ知り合いが多い住み慣れた地域
・自分の家で生活をできるだけ継続
・家から近い郷里の施設を選ぶ
・生活の雰囲気を再現することを許してくれる施設

これらは環境を変えないことになります。わたしも下記記事を書きましたが、この原則と合致しています。亡くなった認知症の祖母は、無機質な病室から動き出した結果のベットからの転落 → 大腿骨骨折 → 死去  と考えると、子宮頸がんでもギリギリまで在宅を選択すべきだったのかな・・・

生活習慣を変えない

「ベットがお年寄りのふつうの生き方を断念させる」 という言葉を見た時に、ショックを受けました。亡くなった祖母はふとんで90年生活していた人でしたから、戸惑ってベットで立ち上がったんだと。ベットからの落下→大腿骨骨折 というのは、本当に病院内で多いのですが、理由はここにあったんですね。

ベットの高さは最も低くしてもらったんですが、それでも違和感があったんだな・・・「全室個室化」「大浴場」「機械浴」「トイレの位置」も生活習慣の変化となり、認知症を悪化させるとのこと。どうしても環境を変えざるを得ない場合、せめて生活習慣を変えない努力が必要です。

人間関係を変えない

「ある特養で職員を替えたら、入所している老人たちの問題行動が増えた」 そうです。これも心当たりがあるのですが、認知症の母のヘルパーさんの担当が代わっただけで、パニックになりました。まさにこの原則です。

本の中では入所前訪問の話があります。施設入所前に事前に顔合わせをして、その人が迎える事で安心するというものです。我が家は、認知症治療に病院に行くのですが、連れて行くのがかなりスムーズです。これは看護師さんが家を訪問してくれて、顔見知りだからなんだろうなと。

介護をより基本的に

「食事、排泄、入浴」 この三大介護をきちんと行うことで、問題行動を減らすということです。食事はおいしいものを食べてもらう、排泄もできるだけトイレで、家庭用の浴槽で入浴というものです。

この原則で面白いなぁと思ったのは、皮膚覚(触覚)、味覚、嗅覚、聴覚、視覚 人はこの順番に感覚が作られ、老化はこの逆で衰えていくんだと。ということは認知症だからといって、口の中にただ放り込む食事はNGです。話題の認知症ケア 「ユマニチュード」 も触れる事を重要視してますが、この原則と合致します。

個性的な空間づくり

「私物はいちばん役立つ介護用品です」 という言葉を見て、やられたな!そう感じました。汚くても役に立たなくても本人にとって大切な思い出の品だから、認知症を落ち着かせるためにも安易な処分は控えようとあります。

先日、介護側都合で廃棄をしていると記事を書きましたが、改めて最低限の廃棄に留めようと思いました。とくに思い出の品は捨てないようにしないとなと。環境を変えないという原則と照らし合わせても、むやみやたらに捨ててはだめだなと。

施設や病院に自分を確認できる品々で囲む とあります。亡くなった祖母に対してこれができなかったな・・今さらながら後悔しています。

ひとりひとりの役割づくり

「やることがない、社会的役割を失うと認知症が進行する」 この言葉がいちばんガツンとやられました。最近一番考えているのが、これだからです。手足が不自由で、友達がほとんどいない。近所のことばかり気にしている母に、どんな社会的役割を与えられるのか・・・

何かを作ってもらってネットで売るとか、内職も考えてみました。ずっと一緒なわけではないので、ひとりでもできないといけないんですよね。ということで、まずは漬物を作って、薬剤師さんや作業療法士さんにあげる というのをはじめました。かつてやっていたことをやる、今でもできることはやる、周りの人に認められる事 が認知症の進行を防ぎます。

ひとりひとりの関係づくり

「認知症のお年寄りは専門性より母性、肩書きに関係なく母性豊かな人(性別関係なく)」 だそうです。家族であろうと、介護職であろうと相性が合わない場合もあります。相性のいい人と交替することが大切だそうです。母は周囲の人に恵まれていて、ほとんどの人と相性がいいです。

いかがでしたか?「医療」視点ばかりで考えがちですが、「介護」視点のほうが実は大切なんですよね・・・絵で分かりやすいのが上の本で、もうちょっと細かく原則を知りたい場合は下の本がお薦めです。

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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

実の親なら介護してあげたい。でも、嫁いできて義理の父母の介護は、長男の嫁と言われても無理です。育った環境、もののみかたや考えられないが全く違う。好みも違う。同じ市内なら実の両親の面倒見たかったが、父は他界。現在85歳の母にもなかなか顔さえ見せられない。現在姑一階に、私たち夫婦と子供二人が二階に暮らしていますが、壮絶です。大小便垂れ流し、オムツしません。ハイハイ状態。悪臭デス.公衆トイレに暮らしているようです。おれは、もらしていねぇの一辺倒。食事もろくなもん作らねぇと、作っても犬にあげます。手に終えません。消臭スプレーしても、すぐにおいます。おわりなきくささとの同居です。

太めかあちゃんさま

コメントありがとうございます。

もし義理の父母の介護を任されたらと考えると、確かに全く大変さが違うだろうな・・そう思います。
親子として過ごしてきた長い時間の中で、言わなくても理解している事がたくさんあるんだとコメントで教えられました。

うちは祖母の独特な加齢臭がまだ抜けないと言って、認知症の母が死から2年経っても窓を真冬でも開けまくります。
前は困ったと思ってましたが、何もしない状態の母を見てからはそれもよしと思えるようになりました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか