認知症在宅介護の貼り紙に関するちょっとした工夫

認知症の人に電話の使い方の説明をしたり、トイレの場所を示したり、これやっちゃダメと注意したりしても、「口頭では」すぐ忘れてしまいます。そのため、在宅介護している介護者の中には、「貼り紙」で注意喚起しているご家庭が多くあります。

特にうちのような遠距離介護の場合は、親と常に一緒に居るわけではないので、貼り紙がものすごく効果を発揮します。今日はこの貼り紙に関する、わが家のちょっとした工夫をご紹介します。

認知症の母のトイレのふた問題

ねぇ、トイレのふたは開けとくの?閉めるの?
くどひろ
閉めて!

今年になって、「疲れるほど」このやりとりをしたので、久しぶりに「貼り紙」で母の質問回数を減らす工夫をしました。

これまでは、母が洗濯機に尿パッドを入れたまま洗濯してしまい、透明な吸水性ポリマーが洗濯槽、衣服に付着する大惨事が何度となく繰り返され、復旧に2時間以上費やすのが本当にイヤになって、洗濯機の前に貼り紙をした経緯があります。

今回はトイレのふた問題と、お風呂場に便を流す問題を解決すべく、貼り紙を2枚用意しました。

介護家族の貼り紙の方法

googleの画像検索で「認知症 貼り紙」で検索してみてください。多くのご家庭が、貼り紙を「セロテープ」等で貼ってます。

うちもセロテープで貼り紙をつけていたのですが、母が違和感があるのか、紙がめくれたり、風でピラピラなびいたりして、すぐはがしてしまいます。しかも理解していないのに、「もう分かった、大丈夫」とか言います。

貼ってははがされるを繰り返した結果、たどり着いた答えが貼り紙をラミネートすることでした。

貼り紙をラミネートする方法

わたしの場合はまず、パワポかWORDでA4サイズの貼り紙をカラーで作成します。貼り紙をラミネートするためには、ラミネーターとフィルムが必要になります。

ラミネーターの選び方ですが、ローラー数が多いほど仕上がりがキレイになります。わたしのラミネーターはローラーが2本しかないため、A4サイズをラミネートすると少し波が出てしまいます。

写真のL版サイズだと、波の問題はありません。また、ウォームアップ時間があり、温まる時間が長いとイヤ!という方は、購入前にチェックしたほうがいいと思います。

フィルムですが、100ミクロンが主流です。200ミクロンはがっちりしていて、家庭の貼り紙なら100ミクロンで十分です。ちなみに今使っているラミネーターを選んだ理由は、価格とフィルム調達のしやすさです。ラミネーター自体は、3000円くらいだったと思います。フィルムは、100枚入で800円以下です。

フィルムはネットで購入できますが、急に必要になってホームセンター等で購入することもあります。うちはナカバヤシ製が調達しやすかったので、フィルムに合わせてラミネーターもナカバヤシにしました。安いところでは、アイリスオーヤマもあります。

ナカバヤシ NEL-101A4D(生産終了?)
ラミネートフィルム
ラミネートフィルムもナカバヤシ

A4サイズの普通紙で作った貼り紙を、フィルムの中に入れます。

フィルムにA4の普通紙を入れる

フィルムごと、ラミネーターを通したら完成です。

ラミネーターからラミネートされて出てきた貼り紙

貼り紙を早速トイレに貼ったのですが、トイレのふたに貼ろうか、扉に貼ろうか悩んだ末、掃除のしやすさを考えて、扉に貼りました。

母の反応は、「かわいいわね!」でした。下記イラストの女の子が、好評だったようです。「今のところ」は効果を発揮していて、ふたの質問はしなくなり、きちんと閉めてくれるようになりました。

トイレのドアに貼りました!

今のところはというのは、いずれ貼り紙に慣れ、景色のようになると効果を発揮しなくなることもあるため、そう書きました。

ラミネーターを買う必要ある?

認知症介護だけのために、ラミネーターを購入するかどうかは、迷うところだと思います。とはいえラミネーターとフィルム合わせて、4000円~5000円くらいなので、投資ストレスはそうでもないです。貼り紙をはがされたり、何度も注意するのが面倒だったりなど、介護ストレスの度合いによるかもしれません。

また、ラミネートしたからといって、認知症の人が貼り紙をはがさない保証はないのですが、うちはラミネートしてからは1度もはがされておりません。ラミネートしたおかげで、貼り替えのメンテナンスがなくなり、何年にも渡って効果を発揮し続けております。

わたしは自作POPを書店さんに配る際にも使っているので、ラミネーターはそちらがメインで、たまに貼り紙用に使っている感じです。

2020年7月発売の新刊『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)でも、この貼り紙について取り上げました。そちらにはラミネーターのことではなく、貼り紙の介護の本質的なところを書いたので、読んでみてください。

このブログでご紹介してきた商品は、うちも使っているとか、使ってみてよかった!という感想を多く頂いているのですが、ラミネーターの紹介は初ですし、在宅介護者のニーズがあるのかは不明です。マニアックな気もしますが、1人でもニーズがあればと思い、発信を続けてきました。

わたしが使っているラミネーターは古いので、同じナカバヤシ製の近い商品のリンクを貼ります。

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今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

8件のコメント

手だけでできるラミネートフィルム、100均にもあります。
A4サイズは貼り紙に使っています。強度がわからないため替えをストックしています。
写真サイズもあり、病院の長い待ち時間ではラミネートした昔の母の写真を何枚か持って行き、繰り返し見せて昔話をして、気をそらしてくずらせない対策に使っています。

貼り紙と言えば、
いろいろな注意の他に

お母さん大好きだよ
元気なだけで、百点満点!

と書いて、すべての部屋に貼りました

恥ずかしいとか、怒られるかなと思ったけど
にこにこしてました

骨折で入院した時は
元気は使えないので、

リハビリがんばってるんだね
今のままで百点満点!
に変えました

退院した今は、グループホームの部屋に

お母さん大好きだよ
本当にどんどんよくなってるね
リハビリがんばってえらいから、百点満点!
と書いてあります

大好きだよは、魔法の言葉です

自宅で暮らしてた最後の一ヶ月は、
実家も本当に、注意の貼り紙だらけでした

くどひろさんみたいに、イラスト載せられないから
A4のコピー用紙に、細いマジックで大きな字で書きました

リモコンは、失くしてしまうから、机に張り付けて
はがさないで!
と書きました

まだ、母がグループホームに入って、4ヶ月だけど、なつかしいです

ふくいさま

なるほど、その手がありますね!
100円均一のラミネートの強度はいかがですか? わたしも昔の写真を持って行って、祖母と母に見せていたことを思い出しました。

ままりんさま

ステキなコメント、ありがとうございます!本当にいいお話ですね、すばらしい!!
母の認知症が進行したら、わたしもやってみようかな。今はまだ照れくさいかもです。
もうお一方のコメント、ふくいさんの100均ラミネーターいらずのラミネートいいかもですね。

母が自立していた頃、
あれしちゃだめ、これしちゃダメの禁止と
ああしろこうしろの命令ばかりだと
家の中が、冷たくなるんです

私はイラストが描けないから
可愛いシールを貼ったんだけど
そのシールが
内容と全然関係なくて、ただかわいいシールだったから
今度はシールのお花とかお人形とかに意識がいってしまうんです

そして、できない、これをしてはいけない
そんなことばかりに囲まれると
母が自分はダメなんだって、落ち込んでしまうんです

母はこんなにも頑張って、できない一人暮らしをしてくれてるのに
そう思ったら切なくて
すごい勢いで
大好きだよ 元気なだけで100点満点
でかいて貼りまくってました
だめなんかじゃないよ、偉いんだよって

くどひろさんみたいに
内容に直結した、可愛いイラストがあればいいんですけどね

あの時に、今、くどひろさんの使われてたような、可愛いイラストがどこかに売ってたらなあって
もう遅すぎるけど思いました

認知症の症状なんて、
種類は多いけど、みんな一緒だから

いつもヒントをありがとうございます。
ままりんさんの 大好きだよ、100点満点 張り紙素敵ですね。

素朴な疑問ですが、くどひろさんのトイレのフタは閉める、はどうして閉めるのですか? トイレをすぐにできるよう、我が家はフタ開けっ放しなのですが、良くないのかな?

我が家は、玄関の電気を夜つけておくか、消すかを何度も聞きます。どちらでもいいので、張り紙ができないのが難しいところです。

ままりんさま

そうなんですよね、よかれと思って貼り紙を多用してネガティブパワーが出ますよね。
うちは貼り紙枚数少なめですが、認知症の進行とともに増えてきました。

ぐりりんさまのコメントにも、ステキと書いてあります!
イラストはネットから無料ダウンロードしたものを使ってます。

ぐりりんさま

ラミネーターをご紹介しつつ、ふくいさまのコメントの100均のラミネーターなしのフィルムがいいかなと。(使ったことがないので、強度はどうなのか?)

トイレのふたを閉める件ですが、菌やウイルスの拡散を防ぐためや、母が手足が不自由で壁やいろいろなものに捕まるので、蓋が開いていると落ちちゃいそうだからです。わたしのスマホ落下防止もあります。開けっ放しのおうちもあるようですし、それぞれかもしれません。

照明に関しては、うちは母が分からなくなってしまったら人感センサー付きLED電球にしようかなと思ってます。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか