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アルツハイマー型認知症の人のリモコン使用調査の論文で分かったこと

テレビリモコン

アルツハイマー型認知症の母(77歳・要介護2、長谷川式9点)が、特にリモコンの操作ができなくなっている。いわゆる「失行」と呼ばれる認知症の症状で、このコロナ禍で一気に進行した。

2020年10月にテレビリモコンを簡易リモコンにして使えなかった話、2021年2月にはエアコンの冷房や暖房の誤操作をする記事を書いたが、特にリモコンがダメになったと感じていた。

失行は認知症の本を読めば書いてあるし、目の前の母も本の通りになっているので、驚きはない。

失行の一般的な対処法は、分かりやすい貼り紙をはったり、とにかくシンプルなリモコンにして使いやすくするなどの方法がある。うちの場合は貼り紙ははがす、新しいシンプルなテレビリモコンは見慣れないから分からないと言われて、使えなかった。

結果、リモコンはそのままにした状態で、スマートリモコンによる見守りにした。冬の冷房を暖房に変えたり、テレビの電源を遠隔で入れたりしてサポートし、わが家では最も現実的で使える対処法だ。

こうした在宅介護経験者ならではの困り事は、介護エッセイや個人ブログなどでは見かけることはあるが、論文があった。

京都府立医科大学の近藤 正樹氏、手塚 陽子氏、水野 敏樹氏による『アルツハイマー型認知症における日用物品使用調査と「リモコン使用課題」の検討』。在宅介護目線で注目してくださった先生方に感謝しつつ、ここでご紹介する。

「リモコン使用課題の論文」とは

介護家族が興味を持ちそうなところを、ピックアップする。まず前提として、調査した人数は32人と少なく、論文の最後でも「多数例で検証が必要」と書いてあるので、ご了承いただきたい。

わたしが最も注目した部分はココ。

「使えない」と回答された物品を多い順にあげると,電化製品では,テレビのリモコン(9 名:
28.1%),電話(7 名:21.9%),扇風機(6 名:18.8%),エアコン(5 名:15.6%),電子レンジ(3 名:9.4%),電気ストーブ(3 名:9.4%),ドライヤー(1 名:3%),電気カミソリ(1 名:3%)であった.

引用元:https://www.jstage.jst.go.jp/article/neuropsychology/advpub/0/advpub_17015/_pdf

アルツハイマー型認知症の方は、「テレビリモコン」を最も苦手としているらしい。ちなみに母の失行の順番は、エアコン→テレビだった。調査結果から、何か法則性があるか考えてみた。

例えば上位2つ、テレビリモコンも電話もボタン(特に数字)が多いので、アルツハイマー型認知症の人は混乱するのかもしれない。この数字の意味は何で、押せば何が起こるのかと。

なにげなく使っているテレビリモコンも、実はいくつかのステップを踏まなければいけないから、それで分からないところもある。

具体的には、電源ボタンを押して、テレビ電源を入れる→数字のボタンでチャンネルを変える→プラス、マイナスボタンで音量を合わせる といった一連の動作が難しい。

この調査には、電化製品以外の日用品も含まれている。鍵、セロテープ、くし、傘、スプーン、爪切りなどである。電化製品が使えなかった認知症の人も、これらはすんなり使えている。このことについては、

動作と効果の関係性が異なっている.従来の道具は効果の予測が比較的容易であり,操作と効果が連続しているが,リモコン操作はボタン押し動作と効果が連続しておらず,より知識的で間接的なつながりである

引用元:https://www.jstage.jst.go.jp/article/neuropsychology/advpub/0/advpub_17015/_pdf

確かに「1」のボタンを押して「NHK」がテレビに映る事実を、今の母に覚えてもらおうと思っても無理だと思うし、理解できないと思う。さらにボタンの字が小さいので、見えないと諦めてしまう。

繰り返しになるが、シンプルで大きいボタンのテレビリモコンに替えると、今度は「見慣れない」リモコンになって、うちの場合はテレビを見ることを諦める。

数年前の母なら、シンプルリモコンの導入でうまくいったはず。しかし認知症テスト30点で9点しか取れない状況まで進行してくると、今あるリモコンを使いつつ、遠隔でサポートしてあげるのがベストだと思う。

母は、テレビの電源が入れられない日がある。しかし、一旦テレビがつけば、チャンネルを変えたり、音量を変えたりはできる。居間でテレビの前でボーっとしているときは、電源が分からないようだから、わたしが東京から遠隔でテレビをONにすることもある。

そして、テレビを消せない日がある。そんなときは、コンセントごと抜いてしまう。ボタンの意味が分からないから、やむを得ない。コンセントを抜かれると不具合がいろいろあり、その対策を今着々と進めている。残っている能力を生かしつつ、なんとか対処していきたい。

こうした介護家族の目線で研究してくださったことに、感謝したい。論文の原本のURLはこちら↓
https://www.jstage.jst.go.jp/article/neuropsychology/advpub/0/advpub_17015/_pdf

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ABOUT US

工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。岩手にいる認知症&難病(CMT病)の母(78歳・要介護2)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて9年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。
【著書】親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)ムリなくできる親の介護(日本実業出版社)医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか