多くの人が関心を寄せる「認知症予防」はどの程度予防できるのか?

認知症予防

2019年6月18日、政府は「認知症施策推進大綱」を発表した。この中で語られている「認知症予防」についての議論が気になったので、調べてみた。

大綱にある認知症予防の定義とは?

この大網の冒頭に、認知症予防について次のように書いてある。

「予防」とは、「認知症にならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味である。 運動不足の改善、糖尿病や高血圧症等の生活習慣病の予防、社会参加による社会的孤立の解消や役割の保持等が、認知症の発症を遅らせることができる可能性が示唆されていることを踏まえ、予防に関するエビデンスの収集・普及とともに、通いの場における活動の推進など、正しい知識と理解に基づいた予防を含めた認知症への「備え」としての取組に重点を置く。

引用元: https://www.mhlw.go.jp/content/000522832.pdf

なぜ「認知症にならない」ことを予防と定義しなかったというと、関係団体や与党などから、次の懸念が出たからだ。読売新聞の記事を引用する。

2025年までに70歳代の認知症の人の割合を6%減らすことを「達成すべき数値目標」とし、策定後3年をめどに施策の進展を確認するとの文言もあった。これに対し、認知症の関係団体などからは「認知症になった人の肩身が狭くなる」などと懸念する声が出ていた。

引用元: https://www.yomiuri.co.jp/politics/20190604-OYT1T50170/

認知症予防というテーマに、多くの人が関心を寄せている。

わたしの講演会に参加した人のアンケートを見ても「次回は認知症予防をテーマにした講演を聴きたい」とよく書いてあるし、自分は認知症になりたくない、そのために予防しておきたいという思いからだと思う。

ただ、大綱にも書いてあるとおり、認知症予防に関してのエビデンスはまだない。だけど、テレビや雑誌では認知症予防の体操や食べ物の特集が組まれ、多くの人がそれを見ている。これに関しても、大綱には次のように書いてある。

認知症予防に資するとされる民間の商品やサービスの評価・認証の仕組みを検討する。

引用元: https://www.mhlw.go.jp/content/000522832.pdf

認知症予防のどの情報が正しくて、どのサービスが間違いないかは、これからの話なのだ。

ちなみに今年5月に発表になったWHOのページには、認知症予防のガイドラインとして、定期的な運動、禁煙、お酒の飲みすぎ注意、体重コントロール、ヘルシーな食事、血圧・コレステロール・血糖値を正常に保つと書いてある。WHOなので身構えてしまうかもしれないが、内容はよく聞くやつである。

People can reduce their risk of dementia by getting regular exercise, not smoking, avoiding harmful use of alcohol, controlling their weight, eating a healthy diet, and maintaining healthy blood pressure, cholesterol and blood sugar levels, according to new guidelines issued by the World Health Organization (WHO) today.

引用元: https://www.who.int/news-room/detail/14-05-2019-adopting-a-healthy-lifestyle-helps-reduce-the-risk-of-dementia

認知症当事者の方が、自らが認知症になった経緯を話してくれる講演会に何度か参加した。その中で語られるのは、社会的孤立もない、ごく普通の生活を送っていた人が、ある日突然違和感を覚え、病院を受診したら認知症が見つかったという話だ。

中には、WHOのいうガイドラインに気を付けて生活していた人もいると思う。それでも、認知症は予防できない。それでも認知症予防について整備する理由がさっぱり理解できないでいたのだが、あるデータを見つけて納得した。

認知症予防は35%分の改善のみ

このデータはニッセイ基礎研究所の三原岳さんがレポートされている。大変興味深いので、グラフを引用する。

引用元: 認知症大綱で何が変わるのか-予防重視の弊害、共生社会の実現に向けた課題を考え(ニッセイ基礎研究所)

そもそも誰もが老化するので、どうしても認知機能は低下してしまう。この図には「潜在的に修正できないリスク」が65%と表記してある。

同じくどうすることもできない遺伝子のApoE4(アポイーフォー)は、デール・ブレデセン著『アルツハイマー病 真実と終焉』でも紹介されていて、この遺伝子を持っていると、アルツハイマー病になる確率が高まる。

これは遺伝子検査キット等で気軽に調べられるが、どうにもできないものの割合が高すぎる。

修正できるのはわずか35%で、聴力の喪失、高血圧、肥満、生活習慣、喫煙、うつ病、運動不足、社会的孤立、糖尿病などが含まれているが、個別に見ると、どれも数%のインパクトしかない。どんなに頑張っても、こんなものかと。

認知症予防に取り組まないよりは取り組んだほうがいいのだが、テレビや雑誌を見て頑張っても、実はどうにもならない割合のほうが大きいのが現実である。

修正できるものは気をつけないと、認知症だけでなく、自分の健康を害するので、自然と意識はするはず。だから健康を害するものは、認知症のリスクも高まると考えておけばいいと思う。

それでも認知症になってしまう可能性は誰にでもあるので、なったあと楽しく生活を送れる方法を考えつつ、介護する人もハッピーな環境を実現するにはどうしたらいいかを考えるのが、現状ではベストだと思う。

それって今もやっていることだから、これからもいかにしてラクに認知症介護できるかを追求していきたい。下記リンクが、政府がまとめた大綱である。

今日もしれっと、しれっと。

にほんブログ村 介護ブログへ
 【2020年講演会・イベントスケジュール】
講演のご依頼・お問合せはこちら

2 件のコメント

  • 初めまして。
    この記事は良記事だと思います。
    テレビ等でもっともらしい認知症予防策が紹介されますが、病気一般の防止策としか思えません。
    40代や50代で認知症を発症した人には、営業マンでバリバリ仕事している時や、看護師の師長をやっている時に発症した人などがいるようですね。
    ほんとうの原因は解明されていませんね。
    この記事の最後の結論の部分は、なるほどと思えます。

  • オンネトーさま

    コメントありがとうございます、お褒めいただきうれしいです。

    若年性認知症の方々は特にそうですが、65歳以上で認知症を発症した人の中にもバリバリ世界を飛び回っていた方がある日突然・・・というケースもあります。

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。

    ABOUT US

    介護作家・ブロガー
    1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。認知症の祖母(要介護3)と母(要介護2)のW遠距離介護からスタート、悪性リンパ腫の父(要介護5)の在宅介護も経験。現在も東京と岩手を年間約20往復、遠距離在宅介護8年目。NHKニュース「おはよう日本」と「あさイチ」でブログが紹介される。著書:ムリなくできる親の介護(日本実業出版社)医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか

    カテゴリ

    アーカイブ