認知症と緑内障とハンバーグとパスタ

ハンバーグ

今日のランチは、ハンバーグ!

そんな気分で、緑内障の母と介護タクシーで眼科へ向かいました。

眼圧も正常値で、医師からもこの調子でいきましょうと言われ、一安心。

眼科への通院介助といえば、いかにも介護っぽくなりますが、わたしの一番の目的は病院終わりの外食です。

目的のハンバーグの店(おしゃれ洋食屋さん)は、眼科から歩いて3分ほどの距離。

雨が降っていたので、左手に傘を持ち、右腕で手足が不自由な母を支えつつ、傘の中に母を押し込みながら、ゆっくりゆっくり店を目指しました。

どごさいぐの、どこ?
くどひろ
ほら、すぐそこ!

とにかく歩きたくない母なので、すぐそこと言い続けるしかありません。認知症なので、店につくまでずっとこのやりとりは続きます。

交通量の多い通りなのに、歩道がない!しかも、道路の端に止まっている車が邪魔!

車をかわしつつ、向かってくる車にも注意しながら歩いていると、1台の車が停車。誰だろうと思って車を見ると、まさかのケアマネ!

こんなこともあるのかとさらに洋食屋を目指し、6分ほどで到着しました。

ハンバーグとクリームパスタ

母に何が食べたいか聞いたところ、カニのクリームパスタが食べたいと。お値段は1500円ほど。

いつもは何でもいいというのに、今日は珍しいなと思って、クリームパスタを注文。一方のわたしは、予定どおりハンバーグを注文。お値段は900円くらい。

20代~30代くらいのOLが集うお店で、女子率高め。40代と70代の親子なんて、どこにもいません。

わたしが選ぶ盛岡の店は割とそういうところが多く、いつもうちら親子だけ場違いな感じになります。でも気にすることなく、常に新規開拓をしています。ただ通院介助するより、こっちのほうが楽しいので。

認知症になってから、母は好き嫌いが出るようになって、例えば鶏肉やハンバーグが、なぜか好きじゃないといいます。でもしれっと焼き鳥を食べたりするので、本当に嫌いなのか、正直なところ分かりません。

サラダとかぼちゃのポタージュを前菜として頂いたあと、パスタとハンバーグが運ばれてきました。わたしでもちょっとボリューミーだと思ったのですが、母は早速「こんなに食べられない」と言い出します。

これも認知症になってからの母の変化ですが、回転ずしのように少しずつ料理が提供されると、エンドレスに食べ続けます。しかし、最初からドカンと盛り付けされると、量に圧倒されて食べられなくなります。

その瞬間の記憶でしか、生きていないからかもしれません。

くどひろ
大丈夫、いつもペロッと食べるから

そう言ったものの、母のフォークは進みません。それどころか、わたしをチラチラとみてきます。何事かと思ったら、

あんたのハンバーグのほうがおいしそうね。そっちが食べたい
くどひろ
何言ってんのー、ハンバーグ嫌いでしょ?

ハンバーグスイッチONだったのに、突然パスタ食えといわれても、正直食べたくありません。わたしはまだ2割もハンバーグを食ってないのに、同じことを何度も言ういつもの母が現れ、

あんたのハンバーグのほうがおいしそうね。そっちが食べたい

認知症の人のいうことを否定しないとか傾聴するとか、そういう対処法が頭を一瞬だけよぎったものの、わたしが食べたいのはあくまでハンバーグ。

普通、こんな風景が頭に浮かぶことはないと思うのですが、わたしは母の汚れた入れ歯をよく洗っています。入れ歯の裏についた汚れを、ブラッシングで落とし、ポリデントします。

自分はそんなに潔癖ではないのですが、それでも母の入れ歯をよく洗っているからか、母と料理を共有するのが好きではありません。入れ歯の裏の映像が・・・亡くなった認知症の祖母もよく、共有の皿にはしをぶっこんで、かき回してたっけ。

ハンバーグが食いたい、母の食いかけパスタは食いたくない。でも、このあと食べ終わるまで、母は「ハンバーグ食べたい♪」と、イヤミなくエンドレスに言ってくるだろう・・・。

結局、母のパスタとわたしのハンバーグを交換しました。母親思いとかそういうのではなく、面倒なことをただ回避しただけです。

満足そうにハンバーグを食べる母、そして完食。わたしのパスタももちろんおいしいのですが、カニ食べたい気分でもなければ、パスタも食べたくない。こうして、ランチは終わりました。あぁ~、ハンバーグが・・・。

盛岡はすっかり秋らしくなってまいりました。

ハンバーグといえば、びっくりドンキー1号店は「ベル」といい、盛岡市内にあります。そのベルの初代店長で名物ドアマンだったSさんは、わたしの本のトークショーに突然来てくださり、びっくりしました。店先に立っている写真パネルの本人にお会いできて、光栄でした。

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか