【認知症】 「冷蔵庫を支配すること」 は行動も支配するということ

ズッキーニ

以前の母は本当に料理が上手で、冷蔵庫に何があるか完全に理解していました。ところが今は賞味期限の管理ができないし、いつのか分からない残り物が冷蔵庫を埋め尽くしています。

ここ数年は、息子であるわたしが冷蔵庫を支配するようになりました。わたしが支配するようになってから、冷蔵庫に入っているものはいつもワンパターン・・・

料理への恐怖心からか、母が間違いなく作ることができる料理の材料ばかりがいつもヘビーローテーションしています。

ある日のこと、妹が実家からズッキーニを持ってきました。(実際はこの倍の大きさ)
ズッキーニ

「これ、どうしよう・・・」

まずこう思ったのは、わたし自身でした。以前の母ならば、すぐにラタトゥイユを作ることができたのですが、今となっては単なる不思議な野菜でしかありません。

ヘルパーさんの買い物がありがたい

考えてみればわたしは妙な料理への恐怖心から、リスクのない材料ばかりを購入してました。ところがヘルパーさんが週1回買ってきてくれる材料は、斬新。主婦目線で、わたしが選ばないものを買ってきてくれます。

母のことを考えるならば、常に変わった材料を用意しておくべきなんです。しかし、この2年間でやってきたことは、あくまで作れる料理の材料をそろえることだけ。ズッキーニという野菜が冷蔵庫に入ってきたとき、

「もっと買い物する材料も攻めないとだめだなぁ・・・」

そう痛感させられたのです。

認知症において

ズッキーニを買うこと = 新しいことに挑戦する ということだったんですよね。でも、煮えてないニンジンの煮物を口にしたり、十分火の通らない鮭を食べると、どうしてもそれらを献立から排除してしまいます。

これは、失敗したこと = やらせてはいけないこと と介護者が判断して、どんどん可能性を狭くしていたんだなぁって。そして冷蔵庫の支配者になったわたしは、冷蔵庫以外のすべての行動でも支配者になっていたんだなぁと。

新しいことには常にチャレンジしているほうですが、それでもやっぱり行動にかなり制限をかけていました。

どでかいズッキーニを見ながら、パーッと駆け巡った頭の中の画が今日の記事です。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか