介護家族から介護職へのリクエストは「口頭」ではなく「紙」で伝えたほうがいい2つのワケ

この1年で、母のケアプランを2回見直しました。

1回目は、母の緑内障の目薬差しを毎日お願いするため。2回目は、訪問介護事業所が急に廃業になり、新しい事業所に変更するためでした。

1回目の伝える相手は、 訪問看護師さん、ヘルパーさん、デイサービスの看護師さん。皆さん知っている方々です。2回目の伝える相手は、新しい事業所の所長、ヘルパーさんで、買い物、目薬、デイ送り出し、ゴミ出しについて、一から説明しました。

8人の方にわが家の事情をお伝えしたわけですが、記事タイトル通り「紙」でお伝えしました。口頭よりも紙がいい、2つのワケとは?

紙のマニュアル作りは効率がいい

紙のマニュアル作りは、大変かもしれません。

しかし真剣にマニュアルを1枚作れば、あとは8人にそれを配ればいいだけです。口頭だけだと、介護職の方も慣れるまで、うちの事情を忘れることもあります。利用者はうちだけじゃないと考えておいたほうがいいです。

マニュアルには、やって欲しいことはもちろん書いているのですが、母の言い訳や癖も書いています。例えば、

『母は「今日は息子・娘が来るから、買い物の必要はない」とよく言いますが、デイサービスで買い物に行きたくない、自分で材料選びができないという意味です。こう言われても、買い物リストは作ってください』

記事タイトル下の画像が、冷蔵庫に貼ってある買い物リストです。冷蔵庫にこれが入っていれば大丈夫という意味で、Excelで作った表を何年かに1回更新しています。新しいヘルパーさんはいつも、このリストを見ています。

家族が思っているほど、ヘルパーさん同士の横の連携は出来ていない

この7年で3つの訪問介護事業所、20人近いヘルパーさんたちとお付き合いしていて思うのですが、ヘルパーさん同士の横の連携(工藤家の訪問介護のやり方についての共有)は、そんなに出来ていないという印象です。

ヘルパーAさんに訪問介護のリクエストを伝えれば、BさんもCさんも同じようにやってくれると最初の頃は思っていたのですが、それは違うなと。

紙のマニュアルを作ってサービス提供責任者(サ責)に渡せば、全ヘルパーさんに同じように伝わります。 しかし、その先は職人の世界だと思います。

ヘルパーさんによって、家の中で見ているところ、やること、話す内容、母との相性などすべて違います。だから職人の技をすべて共有するのは難しく、それぞれの職人が、母の可能性を引き出している、そんな印象です。

それでも、最低限お願いしたいことだけは伝えたいし、遠距離介護でお会いできない方もいるので、マニュアルを作ってお渡ししています。

「紙&口頭」で話すようにしている

紙のマニュアルを作って渡すといいつつ、わたしはヘルパーさんとお会いして、1回は「口頭で」うちの訪問介護について、説明をするようにしています。

なぜこういうケアプランになったのか、わたしがどういうサイクルで遠距離介護しているかなど、ひととおり説明します。

口頭でも説明するけど、詳しくは紙に書いてあるから、あとで読んでねという方式です。ヘルパーさんとの顔合わせ、距離を詰めるという意味もあります。

この方法は介護というより、会社員時代のやり方です。仕事の引継ぎをするとき、「背中を見て覚えろ」的なやり方もありますが、すごく時間がかかります。

紙のマニュアルを作ること自体は手間ですが、分からないことがあればマニュアルを自分で見返すことができます。そうすると、わたしへの質問が減り、自分の時間が奪われることもないし、仕事が効率よくできるようになります。

わたしはいろいろな企業で仕事をしたので、転職のたびに引継ぎが発生しました。会社を辞めてしまえば、連絡もしづらい。だから、会社を辞めるときは、マニュアルを作って辞めました。

マニュアルを作るなんて細かい!と思われた方もいるかもしれませんが、わたしは「最初だけ」口頭とマニュアルで説明して、あとはお任せにしています。

「母が生きていればいいので、自由にやってください」

とも言います。気になる点はたまに言いますが、あとは基本はフリーでお願いしています。

わたしと母との関係と、ヘルパーさんと母との関係はやはり違います。見たことない食材が冷蔵庫にあると、なるほどなぁと思うこともあります。

最後まで、わたしのマニュアル通りお願いしたいと言い続けるのも、おかしな話です。母の認知症の症状もどんどん変化しますし、ヘルパーさんの個性もあるので、最初だけは紙のマニュアルを作るようにしています。

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

共感させて頂きます。悩みや、時には自分の感情を1ミリも見せられない作業をすることもあります。やらないと終わらないのでやるぐらいのスタンスで始めたことも、終わってみたら、なんだか充実感を覚えてしまう単純な私。たぶん起きることすべてが、初体験で訳もわからないことだらけなのです。そうしてもう何年が過ぎてしまったのか、少し感傷に浸ってみました。たぶん今日は母の所に来ているからだと思います。長い1日が終わります。また、リセットして、がんばりましょう。

南の9月さま

ありがとうございます!

そうですね、わたしも目の前のことを処理しないといけないので、とにかく火消しをしていると結果いい方向に転がっていることがよくあります。
そしてそれらをネタにして、ブログや本を書くので最終的には「おいしい」という感覚です。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか