今後の介護方針について

先日、年1回行っている母の長谷川式認知症スケール(認知症テスト)に立ち会いました。結果は30点満点で6点。昨年が8点で亡くなった重度の認知症の祖母が5点でしたから、とうとうここまで来たかという印象です。

かかりつけ医からも、普通なら介護施設に入っているレベルと言われました。母を支える医療・介護職の皆さんの協力、わたしたち家族自身の遠距離介護、認知症介護のたくさんの工夫もあって、未だに在宅介護を続けられていて、最近はいろんな意味で褒められることもあります。

そしてわたしが常日頃思っているホンネ、「間違った介護施設を選んだら、一気に弱って死が近づきますよね」と医師に言ったところ、否定はなかったです。

間違った介護施設に入った途端、おそらく母の活動量は今の3分の1以下になるでしょう。何度も何度も鍵の確認をする玄関も、水拭きを繰り返す見慣れた台所もなくなるからです。

一見ムダに見えるすべての行動が、母の元気を支えていると思っています。それにひとりでトイレに行く、寝室の布団に入る、すべて今の家に居るからできているのであって、環境が変わってしまったら母は何もできなくなり、動かず弱っていってしまうと思うのです。

母の寝る時間が増えていき、一気に弱る姿を想像してしまうのです。祖母が病院のベッドから転落し、大腿骨骨折をしてベッドに居る時間が長くなって、一気に死が近づいたときのように。

といいつつ、今の状態を維持できそうな介護施設について、ケアマネと話し合っています。わたし自身も介護で限界を迎えたくないので、在宅でいけるところまで介護はするけど、カードは持っています。

認知症テストの答え方で感じたこと

いつも母の認知症テストには立ち会って、点数だけを知るのではなく、どういう答え方をしているかに注目しています。

今回最もショックだったのが、野菜を10個答える問いに対して、1つも野菜が出てこず、答えられない理由(言い訳)を繰り返した点です。

母は料理が得意だった人なので、認知症が進行しても野菜は比較的答えられました。病院だったから答えられないのだろうと思って、自宅でわたしが質問しても1つも出てきません。緊張とか周りの環境は、もはや関係ないようです。リンゴ、リンゴ、言ってました。

今後の介護方針について

今後の介護方針を例えるなら、ビジネスに舵を切るという感じです。

会社って、企業理念とビジネスの両面がありますよね? いくら会社が社会貢献のために、世の中に役立つサービスを提供するためにと崇高な企業理念を抱えていても、ビジネスが赤字で経営が続けられなくなったら、理念どころではありません。

介護も認知症の人らしさ、尊厳、倫理観といった大切にしなければならないものがある一方で、現実の在宅介護では元気で長生きしてもらうために、自宅で長く生活してもらうためには、母に様々な制限をしたり、見守りを強化したりしなければならない現実があります。

よくある見守りカメラ論争で、あなたがカメラで監視されたら嫌な気持ちになるのと同じで、必要ないって意見あります。もしわたしの今の介護生活から見守りカメラをなくしたら、母が望む自宅での生活もなくなります。

理想はあるけど、今までよりもさらに現実的な介護をするし、そういう話がブログ記事でも増えていく宣言です。パーソンセンタードケアも尊厳も理解したうえで、母の望む最期まで自宅で生活したい思いを実現するために、より現実路線に舵を切ります。

記事の内容をちょっと不快に感じる方も出てくると思いますが、これがわたしなりの在宅の戦い方だと思って読んで頂けるとうれしいです。

施設に入れればいいんじゃない? 一緒に住めば? と知らない人によく言われますが、最終的な判断は母自身の意思と家族の意思なので、在宅でいけるところまで試行錯誤を繰り返し、そういう発信をしていきたいと思っています。というか、最近のブログ記事はずっとそんな感じです。

これでもわたしは自分の人生を謳歌しておりますし、母も楽しそうなので、介護で疲弊しているわけではないことを最後にお伝えしておきますね。

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今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

10件のコメント

常に”一緒に住めばいいじゃないか?”という誰からも言われてないプレッシャーを感じてます。
一つのことを決めるのに母親の機嫌を伺いながら、
タイミングを見計らって話す…でも”大丈夫”と答えが返ってくる…元々、子供の頃から家族での会話が少ない家庭、自分も話は苦手だ。
会話もなく、見守り、食事の準備だけの滞在。
こちらの想いが伝わらないことに苛立つ毎日。
同居すれば毎日その状態が続く…自分には優しい気持ちがないのかな、と…何も出来ない自分に言い訳する日々。希望を持たなければ楽なのかな…

あおいさま

わたしは会ったこともない人から、お母さんと一緒に住んだほうがいいのでは? 介護施設に預けたらとよく言われます。
気にしてもしょうがないのでスルーですが、自分自身が後悔しない選択をする、それが正解だと信じて介護を続けた結果、離れたままの介護となりました。

私もあおいさんと同じく、あまり会話もなく、食事、洗濯、掃除、買い出しのため、週末、一泊二日の遠距離介護をしています。
まだまだ、足腰が丈夫なので、家で過ごしてもらいたいけど、ただ、家事をこなしてだけいる感じで、自分には優しさがないのかなと思う時があります。
こちらのブログで自分以外の知らない誰かも同じように頑張ってると思い、乗り切ってます。
ありがとうございます。

見守り用カメラ、私も3台稼働中。
このおかげで、安心して、自宅から母を見守れます。私は、付けて良かったです。

きよみんさま

ただ家事をこなしているだけで優しいとわたしは思います。本当に優しくなかったら、遠距離介護をやろうともしません。
わたしはがんばらない介護がモットーなので、いかにして手を抜くかを考えてます!

今週からデイサービスを3日にし、週末の夕食を宅配弁当に…これから暖かくなり、作り置きも難しくなるので”大丈夫、要らない”という言葉を無視して、半ば強引に進めてみる。
準備しなくて楽だと感じてくれたらいいけれど…

私の父も認知症で遠距離介護中ですが、病院の付き添いがメインです。父とは、母が亡くなるまでほとんど会話はありませんでした。
他のブログ読者の方は、食事や洗濯掃除などなさっていて頭が下がります。

ケアマネさんと相談してヘルパーさんやデイサービスを増やそうとしていますが、父はお金がかかるからと言って受け入れてくれません。

sakoさま

他の家の介護は参考にこそすれ、比較はしなくていいと思います。
それぞれの家の事情があり、それぞれの介護の形があるので自分を信じましょう!

弁当の件。最初に話をすると渋るのに、いざやってみると”楽だ”と認識したようで…
周囲との連絡行き違いがあったものの、何とか最初のデイサービス3日と弁当導入は動き出しました。
多分、問題はないでしょう…
周囲の方々の協力に感謝!

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか