畳のささくれにこだわる認知症の母と息子のしょうもない戦い

認知症の母は毛玉を取り始めると、2時間でも3時間でもなくなるまで続けます。

母にじっとしていて欲しいときや昼寝の時間が長くなるときなどは、靴下や服に毛玉があってよかったと思うのですが、今回はいい方向に転びませんでした。

靴下の毛玉を取り続ける母

居間の畳3カ所にささくれ発見!

上の写真の母の左横の畳に3カ所、ささくれができました。靴下の毛玉を取り終わった母の次のターゲットは、このささくれ。まるで毛玉を取るかのように、ささくれを取り始めたのです。

最初は気にも留めてなかったわたしも、1日、2日とささくれを取り続ける母を見て、これはやばいなと思い始めました。

というのも、気づいたら母が常にささくれを取っているため、範囲がどんどん大きくなっていきました。それで早速、対策に乗り出したのです。

青丸がささくれの箇所

畳のささくれの補修方法

畳のささくれの補修についてネットで調べたところ、下記の方法が見つかりました。

  • 木工用ボンドで固める
  • 畳補修用テープを貼る

最初は補修用テープがいいと思ったのですが、母がテープを気にするかもしれません。対策を考えている間も、ささくれを取り続ける母。どんどん状態が悪化していきます。とにかく止めさせなければ!わたしは2階にあった畳マットを持ってきて、ピンで留めました。

これでどうだ!

ささくれを隠すために畳マットを貼る

しかしわたしがトイレに行った隙に、母はピンを外して畳マットを片づけ、ささくれを取り始めました。これでもダメか。

今度はホワイトボードに『畳触らないで』と書いて畳の上に置きましたが、ボード自体を片づけてしまいました。これもダメ。認知症が進行した母に口頭で注意しても効果はないし、気になり出したらもう止められません。

こうなったら最終手段だ!

玄関にあった重い椅子型の手すりを畳の上に置き、ささくれが大きくならないように隠して、ついでに居間に手すりを設置したらどうなるかのテストもしようと考え、設置しました。

椅子型手すりをつかって畳のささくれを防御

重い手すりまで動かす母に脱帽

手すりを見た母は、今度は手すりの下のじゅうたんの毛玉を取り始めました。そんなとこの毛玉まで取るの?

あっという間に作業を終えた母は、写真の重い重い手すりを移動し始めたのです。嘘でしょ、手足が不自由な人がそこまでする? そして畳のささくれが現れ、また畳いじりが始まりました。

ダメだ、何をやっても突破される……。

もしこのまま東京に帰ったら、畳に穴が開いてしまうでしょう。それくらい何時間でも、ささくれにこだわり続けるのです。母と3日ほど格闘しながら必死に考え続けたところ、お風呂に入っているときにある案が急に降りてきたのです。

畳を1回外して180度向きを回転させて、母の見えないところに畳のささくれを追いやればいい! 

早速、母がデイサービスに行った隙を見計らって、畳を回転させました。

マイナスドライバーで畳を外して回転させた

デイから帰ってきた母は何事もなかったかのように、いつもの日常生活を取り戻しました。母と息子のしょうもない3日間の戦いは、畳の回転で幕を閉じました。そこそこ疲れる案件でした。

この畳のささくれ。なぜ急に出来たのかというと、妹が母の白髪を染める際に白髪染めをこぼして、そこからできたものらしいです。

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今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

4件のコメント

見えなくすること、は有効な対策のひとつですね。

いつも素晴らしい工夫ですね!
ちなみに
畳表を取り替えると言う選択肢は?(^◇^;)

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか