改めて考えてみたい認知症の人のお金の管理 「3つのポイント」

認知症 銀行口座

認知症の方のお金の管理、みなさんはどのようにされていますか?

包括支援センターや社協、成年後見制度も利用しない、”家族だけで” 金銭管理をする場合です。3つのポイントにまとめてみました。

最初に感じた高い壁・親の通帳に近づくこと

介護に入る前、親が通帳をいくつ持っているか、いくら持っているかなんて全く知りませんでした。介護をしているみなさんでも、未だ聞いていない、知らないという人が多いかと思います。

わが家の場合は、成年後見人や相続をわたしがやったので、母の口座を自然に知ることができました。祖母の未支給分年金をもらうために、母の通帳を借り、その際に口座やいくら持っているかを知りました。今では完全にオープンです。

よくオススメするのが、エンディングノートを書いてもらう時に知るというものです。どの銀行に口座があって、口座番号が何番かなど記入する欄があるので、これを記入してもらいます。介護費用がどれくらい必要になるかを知る意味でも、通帳に早めに近づくことは大切だと考えます。

ここからが、3つのポイントです。

口座はできるだけひとつにまとめる

固定資産税、2年間未納事件が発覚しました。今思えば、通帳に認知症のサインがあったのに、当時は口座に近づけなかったので分かりませんでした。

通帳明細に認知症のサインが現れる!

コラム等で書くこのコトバは、この体験が元になっています。暗証番号が分からなくておろせない、必要以上に何度もおろす、何年も記帳してない、はんこを失くすなど、意外と認知症における通帳の役割は大きいです。

未納後、あらゆる公共料金の督促が気になりだしました。母は専用口座に自分で入金をして、そこから引き落としにしていたのですが、こちらも督促状が届くようになりました。

祖母が亡くなった時に、相続を理由にして、専用口座を作りました。その口座からは新聞、ガス、水道、電気、訪問介護代など、ほとんどを引き落とすようにほぼ一本化しました。結果、督促はゼロになりました。

口座は社会とのつながり

ひとつにまとめるといいながら、実は2つ口座を持っています。母が年金を受け取るための口座です。自分でおろしにいくことはできなくても、月1、2回はATMに一緒に行ってお金をおろすことをしています。

これは自分でお金を管理しているという緊張感を、認知症になっても母に持ってもらうためです。その証拠に、通帳は見ているし、お金を分割して隠す癖があります。いろんなところに隠すので、よくなくなります。しばらくすると出てくるのですが、この緊張感を持っていることがわたしは母にいいことだと考えています。

社会とのつながりを意識してもらうためですが、軽度の認知症の母には意味があると思っています。

通帳に手書きで使い道を書いておく

わが家は預金通帳の記帳後に、鉛筆で ”使い道を” 書くようにしています。

  • レンタカー
  • 通院費
  • 交通費

この方法は便利で、何のためにおろしたかすべて理由が分かるようになっています。一応、家族の信頼はあるのですが、後日通帳見たら使い道が分かるようにしてあります。なぜ1万円おろす必要があったのか、後日見ても分かるようになっています。

3つ目のポイントは、次のお話と関連しています。

家政婦に全財産のニュース

先日、Yahooトップを飾った、50年以上仕えた家政婦さんに全遺産相続のニュースがありました。改めて遺言書の大切を実感するニュースとなりました。

平成23年に死去し「遺産は全て家政婦に渡す」としていた資産家女性=当時(97)=の遺言に反し、実娘2人が遺産を不当に持ち去ったとして、家政婦の女性(68)が遺産の返還を実娘側に求めた訴訟の判決が東京地裁であった。実娘側は「遺言は母親をだまして作成させたもので無効だ」などと主張したが、原克也裁判長は「介護せず資産のみに執着する実娘2人と違い、資産家女性に50年以上、献身的に仕えてきた。遺産で報おうとした心情は自然だ」と判断。家政婦の女性を全面勝訴とし、実娘側に宝石類や約3千万円など全遺産の返還を命じた。
引用元:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160124-00000045-san-soci

わが家の場合、母の遺言書はまだ作ってません。どうしたいかという事は話していますが、ひとつ問題なのは家出中の父親です。母はわたしとわたしの妹の2人で分けて欲しいと思っています(割合も決まってる)が、このまま亡くなると25年別居中で、何もしてない父にも権利があるんですよね。このニュースを見て、ドキッとしました。

この話を引用元までたどると、実娘が家政婦さんに使い込んだ!とか言っているんですよ。こういう時のためではないですけど、通帳に記載(証拠にはならないかも)は意味あると思っています。遺言書は大切なんですが、まだエンディングノートどまりの我が家です。

今日もしれっと、しれっと。


にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか