老いに抗うか受け入れるかの程よいバランス

多くの長寿番組が終了する中、こんなニュースをよく目にするようになりました。

50歳以上の層は購買意欲が薄く、50歳以上の視聴者が多くてもスポンサーが付きづらいというテレビ局側の事情があるため、今は多くのテレビ局が「個人全体視聴率」からさらに年齢層を絞った49歳以下の数値を気にしているんだそうです。

引用元https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84723?page=3

視聴率の指標も変わるのねと思っておりましたが、そのことよりも来年からは自分自身が個人全体視聴率の世代から外れてしまうんだという、そもそも測定されてもいないのに、社会から外れていく妙な寂しさを感じたのです。

迫る50代に向けて

とうとう30代になったかーとか、もう40代だーといったあの時の感覚とは明らかに違う、老いへの重みを最近は感じます。30代かーとか言ってた頃は、そうは言ってもまだまだ若さの自覚が残っていました。

ここから先は、本当に身体面、精神面、仕事面で年相応の老いを「しっかり」受け入れる作業が始まるのだと思います。それでも60代、70代の方から見れば、50代はまだまだ若いと思うはずなので、今の若さを楽しんでいかないといけないとも思ってます。

もし今も会社勤めを続けていたら、こうした感覚はもっともっと強くなっていたことでしょう。例えば50代で迎える役職定年がひとつの例で、ある年齢を迎えると役職から外されてしまいます。リストラされる同僚もチラホラ、独立する仲間も増えてきます。

わたしは40代ずっとひとりフリーランスだったので、仲間の昇進とかリストラとかあまり意識せずに過ごしてきました。それはいい環境だったと思っているのですが、もうちょっと前から意識していてもよかったのかなと思う部分もあります。

老いに抗い、老いを受け入れるバランス

いくつになっても老いに抗っている有名人を見て、かっこいい部分と思う反面、老いの受け入れは一生やらないの? と思うこともあります。ちなみにこれは、見た目だけの話です。

見た目はいろんな技術でキープできる時代ですが、身体的なところではどうにもならない老いもあります。

以前は、好奇心さえあれば、ある程度老いに抗えると思っていました。ただ、その好奇心を保つためには、相応の体力が必要なことを痛感しています。

視聴率のニュースに急に引っ掛かってしまったのも、コロナ禍で生活リズムが崩れ、アクティブに活動する時間がグンと減って、体力が落ちたことが原因かもしれません。最近、スポーツジム通いを復活させましたが、まだフルメニューにはなっていません。

マスクを着用しながら走ったり、重いウェイトを上げたりするのが、やっぱり慣れません。呼吸がつらいので、コロナ前の7割~8割程度のメニューしかできません。

岩手の実家近くのジムと東京の両方使えるところに通っているのですが、コロナが終息するまで行きづらいというのもあります。なので、遠距離介護中はお散歩のみになり、都内で鍛えた分がリセットされてしまいます。自宅で黙々とメニューをこなせないタイプで、ジムに行かないと体力づくりができません。

老いに抗い続け、受け入れないで、20代、30代の若さばかりを意識するのもイタイと思うし、かといってすべてを諦める年代でもない。程よく老いに抗いつつ、少しずつ老いを受け入れるバランスが大切だと思うのです。

突き抜けるほど老いに抗うのもかっこいいのですが、万が一病気で倒れたときに受けるダメージが、老いを受け入れてないとハンパないかなと。老いを少しだけ受け入れておけば、どんなに若いと思っていても、体は老いていると諦めがつくのではないかと。

このプロセスは、認知症になった親を受け入れるプロセスに似ていて、最初は認知症を認めたくない期間が続き、だんだん親の認知症を受け入れ、寄り添うようになるあの感じと同じです。

こうした葛藤は、年を重ねるにつれ強くなっていくはずなので、あんまり考え過ぎずにしれっとやってくつもりです。10月は体力を戻すことができましたが、来月からまたお散歩になります。

音声配信voicyの最新回は、認知症の母が作った切ない朝食の裏話をご紹介します。ちょっとネガティブな回かもしれません↓

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか