同じ地域の身近な人が成年後見人を行う 「市民後見人」とは?

前回、

  法人が成年後見人を行う 「法人後見人」 は、遠距離介護の味方になる! 法人が成年後見人を行う 「法人後見人」 は、遠距離介護の味方になる!

という記事を書いたところ、いいね!を25個も頂きまして正直びっくりしています。成年後見制度の事をブログで書いても、制度自体を知らないために、いったい何のこと?となって、アクセスが減ります(笑)

わたしは成年後見人を現在やっていますし、その職務や手続きをこのブログで公開しています。 ”成年後見制度という制度を、もっと知ってもらう” というのがブログの狙いでもあるので、反響が大きいということは大変ありがたいです!今回は 「法人後見人」 よりも、もっと身近になるであろう、「市民後見人」 のおはなしです。

市民後見人とは?

文字通り、「市民」 が成年後見人になるという制度です。「市民後見人」になれる人とは、

市民後見人は,判断能力が不十分になった人と、(1)同じ地域社会で生活する住民で、(2)その生活の中から物事を考え、(3)同じ地域の人たちと関係を築き、(4)共に地域で暮らしていく人です。したがって、市民後見人は、地域社会での生活の延長線上で、判断能力が不十分になった人の立場に立って、その人の生活を支援するために何が最善なのかを考えることのできる素養を有していることが必要となります」(引用元より抜粋)


現在、日本全国の認知症患者の数は、最新で462万人と言われていますが、対して成年後見人の数は14万人。率にして、わずか3%しか利用されていません。認知症患者はこれからどんどん増えていきます、と同時に、成年後見人のニーズも爆発的に増えます。

専門家であり、成年後見の職務ができる、弁護士や司法書士、社会福祉士の数が足りなくなるのも明らかで、受け皿として先日紹介した、「法人後見人」 や この 「市民後見人」 が期待されています。ニーズ不足の解消に加えて、「市民後見人」 ならではの ?”強み” もあります。それは、

専門職(弁護士、司法書士など)は法律や福祉のプロでしょうが、判断能力が不十分になった人の 『身上監護』 という面では、その地域に生きる市民後見人の方々の経験値にかないません。それゆえ、高齢者の方々を支援するには、市民後見人の方々の力が積極的意味において必要なのです」(引用元より抜粋)


耳慣れない、「身上監護」 という言葉が出てきました、これについてちょっと解説します。

身上監護って?

この 「身上監護」 (しんじょうかんご)という言葉、初めて目にする方も多いと思います。「身上監護」とは、成年後見人の2大職務のひとつで、もうひとつは財産管理です。わたしがやっている 「身上監護」を例にすると、

・入院時の契約、費用の支払い
・市役所に行って、後期高齢者医療保険の更新をする
・市役所に行って、医療費の減額認定をする
・郵便物チェック

などで、施設に入っている方は、介護サービスの申し込みとか、ケアプランの検討なんかも 「身上監護」 に含まれます。結局は 「契約系」 であって、祖母の介護そのものは、「身上監護」 とはいいません。介護は 「事実行為」 といい、職務に含まれていません。あくまで契約系だけなのです。

これって弁護士、司法書士の方にはいい話で、最悪、契約系だけこなしていれば職務は成り立つということでもあります。成年後見人を探す時は、ちゃんと面会してくれたり、施設探しまで考えてくれる人を候補にしないと、後で変えるのは大変です。施設や病院の関係者と連絡を密に取れないようでは、成年後見人失格です。中には、面会すらしない人もいるとか、いないとか・・・

前置きが長くなりましたが、そう考えていくと、この 「市民後見人」 って、とてもいい選択だと思いませんか? 同じ地域で、同じ生活者目線に立ってくれる、そしてこの 「身上監護」 に強い!信頼もできるし、知っている人なら財産の横領もしないのでは??

我が家を例にすると、「身上監護」 と 「財産管理」 どっちが重要?と言われたら、間違いなく 「身上監護」 っていいます。本人との面会もあるし、市役所や病院、ヘルパーさんなど会う人が多いからです。

「財産管理」 は最初こそ財産の洗い出し、銀行の手続き、収支予定表の作成などかなり大変ですが、それ以外は家計簿感覚で仕事ができるので、そんなに大変ではないです。そんな 「市民後見人」ですが、課題もあります。

一般市民のレベルアップが必要

「市民後見人養成講座」 でみなさん勉強して、レベルアップをしていくんだそうです。家族が成年後見人になるケースはとても多いので、その経験者を優先的に 「市民後見人」 にするってのは、どうでしょう?(誰に対して言っているのか不明ですが・・・・)

いずれにせよ、まだまだこれからというところですが、近い将来、とても重要な役割を、「市民後見人」 は担うことになりそうです。わたしも経験を生かして、他の誰かの後見人やろうかな~

元記事:

高齢化社会の新しいサポート役 「市民後見人」とはなにか?|弁護士ドットコムニュース高齢化社会の新しいサポート役 「市民後見人」とはなにか?|弁護士ドットコムニュース

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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

こんにちは
私も今父の成年後見人をしておりますので、記事がとても参考になります。私の場合は、後見制度支援預金利用開始時は、司法書士が専門職後見人として財産管理を担い、私が身上監護をしておりました。でもこの司法書士がすごーく威張るうえ、私の父の仕事は優先順位が低いらしく全然手続きをしてくれない人で、なぜか私がこの人の手下みたいな扱い方をされて腹が立ちました。家庭裁判所にも2回ほど相談し、担当者からもこの司法書士に言ってもらったのですが全くダメでした。いよいよ家庭裁判所に文章で陳述書を提出しようという段階で、手続きを始めました。待つこと8ヶ月…この成年後見制度支援預金って、士業の人を食わすだけの目的?と感じます。なぜなら、後見支援預金に財産を移行するのって全く難しくない事務仕事…特に最初から全部の手続きと書類作成等してきた親族後見人なら尚更です。後から家庭裁判所が正しくやれたかチェックすれば済む程度のものです。この司法書士はやった仕事と時間に見合っていない高い報酬(17万円!)をゲットして解任となり、ほっとしていますが、父の財産が搾取された気分です。ハズレの司法書士を当てがわれると地獄です。彼らには美味しい仕事でしょうが…

ありさま

わたしは10年前に親族後見人の任務を終えておりますが、リアルな陳述書の話大変興味深いです。
なぜかこのブログにはポツポツと、成年後見制度の専門職後見人である弁護士、司法書士への不満の書き込みがありますよ。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか