介護している人にとって「母の日」は少し違ったものに見えるかもしれない

母の日 介護

母の日の2日前、東京に居るわたしのところへ母から電話があった。

朝にはなかったお花が、ここに飾ってあるんだけど、何?

母は認知症なので、記憶も曖昧だし作話もよくする。

きっと、いつもの作話だろうと思い、わたしはこう答えた。

くどひろ
陽子(わたしの妹・仮名)が、2日前に花置いてったらしいよ
あら、そうだったの。

とっさに思いついたわたしの嘘だったが、ここで「なんだろうね」「知らないな」と答えると、母が「誰かが勝手に家に入ったのでは?」と不安になって何度も電話したり、妹にも電話をするはず。

とはいえ、気になって妹にLINEで

くどひろ
花があるって電話きたけど、ひょっとして置いてきた?
うん。母の日は実家に行けないからね。今日置いてきた。

母の電話のとおり、本当に朝の時点で花(記事タイトル下の写真が現物)はなくて、デイから帰ってきたらあったんだ・・・

母との日常会話は、ほとんどが母の作話ベースで展開されるので、それになんとなく合わせて日常を過ごしているわたしには、たまにある「正解」は驚きなのだ。

介護者にとっての「母の日」とは?

母の日当日は、実家で母と一緒にテレビを見ていた。

母の日だけあって、「今日は母の日です」というCMがうざいくらいに放送される。

今日は母の日なのね。

CMの回数分、母の日なのね?と言われると、なんとなく「息子のあんたからは、何か母の日にないの?」と言われているような気分になってくる。

くどひろ
ほら、母の日の花が飾ってあるでしょ

そういって、何とか母の日をしのいだ。

わたしも介護生活の前は、毎年フラワーデリバリーを東京から岩手の母に贈っていた。

自分が会社員のとき、母の日ビジネスをやっていたこともあって、男性の割には母の日のことは忘れず、マメに贈っていたほうだと思う。

でも、介護が始まってからは「母の日」はほとんどやってない。

介護して6年が経ってこう思う。

あのとき花を贈っていたのは、「たまにしか会わない」母親へのせめてもの親孝行だったのではと。

遠く離れ、たまにしか会えない母に、育ててもらったこと、生んでくれたことを感謝しているよ と言葉では言えないので、なんとなく花でごまかすみたいな。

親孝行ができていない自分への罪滅ぼしを、母の日という儀式を利用してやっていたのかもしれない。

しかし、今は毎日が「母の日」みたいなもの。

介護が親孝行とは思っていないけど、たまにしか会えないわけでもなければ、何もしてあげられてないという後ろめたさもない。

今週はものわすれ外来のあと、どこかでおいしいランチをする予定がある。

その次の日は、天気が良ければ富士山旅行にも行く。

いつも以上にめちゃめちゃお金を使う週だから、母の日こそしれっと過ごしたいのだ。

ちなみに母の日の夕食は、しゃけ、ほうれん草のおひたし、きんぴらごぼう、味噌汁のみ。

冷蔵庫の在庫と、母の限られたレパートリーと相談した結果、2日連続同じメニューになった。

もちろん母は2日連続だと気づかないけど、これも富士山でお金を使うためにガマンガマン。

静岡の天気予報が、今のところ「くもり」。

10万近くのお金を払って、しかも日帰りで富士山が見えないのは意味がない。

ブログ読者の方に情報を頂いたおかげで、いいプランもできた。

でも曇りの富士山だと、認知症の母の記憶にも雲がかかってしまう気がする。

2日前の天気予報で曇り予報だったら新幹線チケットをキャンセルして、来月か秋ごろに再チャレンジする。

これが母の日のプレゼントってことで、勘弁してもらおう。

74年間岩手山ばかり見ていた母には、富士山のあの光景は驚きだと思う。

介護者の皆さんは、どういう思いで「母の日」を過ごしたのか、少し気になる。

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

8件のコメント

くどひろ 様

ご無沙汰してました。
母の日、うちは2日前の金曜日にカーネーション入り寄せ植えを一緒に作りました。もともと花が大好きで仏壇にも花を欠かしたことがなかった人も、すっかり忘れてますが、日がな一日テレビを見ている母が『母の日』というキーワードで『私には何もプレゼントがない(泣)』と悲観しないように、わざわざ私達姉妹の名前をでかでかと書いたメッセージカードも添えて居間に飾ってきました(^_^;)

毎日見る度にハッピーになってくれたらいいなぁと願って\(^_^)/

奈都さま

なるほど、名前をでかでかとっていうアイディアいいですね!
うちは「なんなの、あのお花は?」と、母の日の花だということが分かってないみたいなのでそうすればよかったです。

仏壇のお花、うちも帰省するとほぼ枯れています。わたしが買ってくる役割です。

くどひろさん初めまして。
両親と1年前から同居しています。
AD母(要介護1)の元には母の日前に私の弟夫婦、姉からは花、叔父からはメロンが(偶然)届き、更に伯母(すこぶるしっかり者)が訪ねて来たりと、普段ないことが立て続けにあり、「私にばっかり何だろう?私、死ぬの?どっこも悪くないよ」と不思議がっていました(^^;)
母の日・父の日なんて忘れているので、来月父に何か届いたら「父さんばっかり!」とすねるの目に見えています。
ちなみに私自身は数年前から何もしておりません^^

くるんさま

コメントありがとうございます!

ステキなご親族だと思います。ドロドロとした親族話ばかりが耳に入りますが、いいですね。父の日は閑散としがちですが、父の日もまた賑わうというところもステキです!

いつも楽しく読んでいます。
皆さんのお話がほのぼのしていて、思わず和みました。お花を贈るとは、素敵です。
うちは、スーパーでお買い得用どら焼きを前に、母(アルツハイマー型認知症)が遠慮するものですから、「今日は母の日だから、遠慮はいらないよ!」と言いました・・・えぇ、どら焼きの前で・・・今度の誕生日は、少しだけ高級なものにしたいと思います(;’∀’)

はぴねすさま

Twitterではいつもありがとうございます、はぴねすさま!

どらやきを遠慮する・・・それがお買い得用というところが、面白いですね。ひょっとしたら量が多過ぎて、お母さまが遠慮したとか?うちは母の日は何もしないのですが、誕生日とクリスマスは毎年ケーキと寿司でお祝いしております。

くどひろさんこんにちわ
私はある時期、子供のころから親へのプレゼントはモノである意味がないと思うようになりました。
片づけ掃除できない、ほしいものは自分で買う、プレゼントも使わない(大事にしまってるは言い訳)。
 
人それぞれだとは思いますが、前から基本母の日や誕生日は、しないか、花オンリーです。が、
今回は勝手ながら「私が会いに行くのだけでも本人はうれしいだろうなぁ、花は管理できないのでもう今年はやめよう」と思いつつもアレンジされてる花を買ってしまいましたが、花を見てきれいだなぁとか少しでも心癒されてる瞬間があるのか思いながらもそうであってほしいと期待した母の日でした。

だんご47歳さま

そうですよね、少しでも心癒される瞬間は必ずあると思います。人によってはお花のほうが、カレンダーより季節感を感じる方もいるので何かしらの意味はきっとあると思います。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか