日本医師会総合政策研究機構のアンケート「かかりつけ医と認知症介護経験に着目して」を読んだ。注目したポイントが「認知症介護経験のあるなし」で、認知症に対する意識の持ち方や考え方が大きく違うということだった。
アンケート結果を見て、なるほどと思ったグラフを3つご紹介したいと思う。ちなみにアンケート対象者の平均年齢は61.6歳、女性比率が78.4%、2017 年 3 月から4 月にかけて1,557 名に実施したものである。
認知症になった場合に希望する生活場所
一番面白いなと思ったグラフがこれ。認知症を発症したときどこで生活したいかという問いを、認知症介護経験者と未経験者に聞いたもの。
青の棒グラフが認知症介護経験者(身近で認知症の人に接したも含まれる)、白の棒グラフが認知症介護未経験者である。
まず自宅で生活したいと思う人がどちらも1番で、次いで介護施設、病院という順番である。認知症介護未経験の人は、認知症介護経験者と比べて、認知症の人は自宅で過ごすべきで、介護施設は望まない、病院は選択するという結果になる。
認知症介護経験者のほうが、介護施設のよさを分かっているし、一方で病院に預けることの恐怖(人によるけど)も理解している分、介護施設の比率が高いのが面白い。何も自宅で介護することだけがいいというわけではないということを、身をもって理解しているのだと思う。
認知症についての考え
認知症介護経験者も未経験者も、認知症の早期発見は大切だと思っている。認知症介護経験のある人のほうが、治療によって症状の進行を抑えたり改善できることを理解しているし、家族や周囲の人の理解と支えでこれまで暮らしてきた地域で暮らすことができると思っている。
そして認知症介護経験者のほうが未経験者よりも、認知症はふだんの心がけで「予防できるものではない」と思っている・・・バリバリ仕事や家事、地域活動を頑張っていた人が突然、認知症になるという話を、認知症介護経験者はどこかで必ず聞いていると思う。そして、認知症は20年以上前から予兆があることも分かっているから、認知症介護未経験の人よりも予防に関しては現実的に見ているのだと思う。
読み書きや計算、バランスの取れた食事、適度な運動など、いろんな認知症予防の特集をテレビで見かける。どれも「多面的に」やったほうがいいと思っているのだけど、認知症介護を経験した人は、そういった予防に取り組んだ人でも認知症になったという人を知っているから、予防にも限界があることを分かっているのだと思う。
認知症の疑いがある場合の相談先
最後に、認知症の疑いがある場合の相談相手として3つ選べという問いの結果をご紹介する。これは認知症介護経験のあるなしで分かれていない。医師や同居家族に相談するという結果は当たり前と思いつつ、「認知症の人や家族を支援するNPO法人等」の割合が思いのほか伸びていないと思った。
認知症介護を経験している人が持つノウハウや思いって、わたしはすごいと思う。正直、病院や市区町村の窓口に行って、介護者や当事者にどれだけ時間を割いて相談に乗ってもらえるかというと、忙しいこともあって時間も割けなければ、解決せずモヤっと終わることはある。
その点、認知症介護経験者は、介護未経験者に対して、言葉を翻訳しながら分かりやすく教えてくれるし、次の介護者を助けたいという気持ちもある、時間を多く割いて活動してくれている人もいる。
だから、もっと認知症介護経験者を頼って欲しいと思う。特に在宅で介護している人は、認知症の人と接している時間はとてつもなく長い。だから、いろんな思いもあれば、面白ノウハウもいっぱい持っている。
もちろんミスリードしてしまうこともあるのだけど、医療・介護職でも同じようなことはないこともない。介護未経験の人にも、いろんな選択肢を持って欲しいとアンケートを見て思った。
今日もしれっと、しれっと。
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