田舎介護の悩みと都会介護の悩みの違い

田舎と都会

わたしの遠距離介護先であり、ふるさとでもある岩手県盛岡市。

県庁所在地で人口30万人の中核市なので、首都圏ほど介護施設や病院・医師の数は多くなくても、それなりに選択肢はあるほうです。

「田舎介護」と「都会介護」という造語を勝手に作ってみましたが、盛岡は「都会介護」に属すると思います。

一方、わたしが行った講演先の中には、人口5000人の村もあります。平成の大合併で、村や町が市として合併したところも多いのですが、それでも人口数万人規模の市で、さほど大きくありません。

そういった町へ行き、お話しをすると決まって、

町の女性
くどひろさん、うちの町は医者も介護施設もないから、選びようがないんですよ・・・

という話になります。

その地域で働く役所の皆さんともお話しするのですが、町の方と全く同じ意味の言葉を「社会資源(制度、施設、資金、情報、医療機関、集団など)が不足している」と表現します。こういう町は「田舎介護」に属します。

田舎介護と都会介護の違い

都会介護は社会資源が豊富で、選択肢も多い。でも人口が多いので、施設の入居待ちの時間が長い。田舎介護はそもそも選択肢がないというつらさがある・・・みたいな一般論がオチではありません。

ここからは、わたしが全国に足を運んでみて、介護の話を聞いたうえでの話です。

わたしの講演会は、くどひろの知名度で集客しているわけではなく、「認知症」や「介護」自体に興味を持って参加されます。もちろん、わたしの本やブログを知っていて、会いに来てくださるケースもありますが、圧倒的に前者の割合が多いです。

そのため、わたしの講演会に集まる人数=その地域住民の介護への関心度・参加度 になります。

例えば数百万人いる都市部と、5000人しかいない村。人口では数百倍の差がありますが、講演会に参加する人数の差は、2倍もありません。下手すると、人口の少ない町のほうが、都市を上回ることだってあります。

最初の頃は、講演会のオファーを頂くと、その町の人口をチェックして「今回は参加者少ないだろうな~」と思っていた時期もあったのですが、町の人口と講演会への参加人数は比例関係にないことが分かり、最近はチェックしなくなりました。

なぜ人口と参加人数がリンクしないかを考えたときに、その地域の「介護への熱」の差なのかなと思うようになりました。

人数ではなく地域のつながりの強さ

介護に熱い市区町村の特徴として、わたしのような介護の講演会の告知が、町へ染み渡るように広がります。

市報や町報だけではなく、民生委員や市民サポーターの皆さんが、口コミで講演会の告知をし、集客します。そのネットワーク力が強い地域ほど、人はたくさん集まりますし、日頃から地域のコミュニティが充実しているんだなと感じます。

特に介護に強いコミュニティが形成されている市区町村の特徴として、わたしの講演会に医師も含む、様々な職種の方が参加されます。「介護家族の話なんて参考にならない」と言って、そもそも興味を持たない、逆の意味の意識高い系に遭遇することも正直あるので、その熱心さに驚きます。

また、市の職員の方々と市民のコミニケーションが密だったりすると、その講演会の人数は、市の人口とは全く関係ない集まり方をします。住民組織、例えばNPOやボランティア、自治会など、住民の参加意識の強さと、役所の連携がうまくいっているなぁ~ そう感じるケースがあります。

そこにはもはや都会だ、田舎だという違いはなく、その町が持つそれぞれのネットワークの強さの違いだと思います。都会のほうが人が多くて希薄というわけでもなく、人口が多くてもそれができる市区町村もあります。

また、地域にそれほど期待ができないと感じている方は、他のつながりに活路を見出すといいかもしれません。

例えば生協さんやJAさんのような組合に属している皆さまは、もっとすごいです。介護に関する情報の濃さ、スピード感、実行力、どれも本当にすばらしいです。地域のつながりより、はるかに上です。

「地域で支える」という文字を見ると、どこか絵空事のように思えていた時期も正直あったのですが、そうではない地域もありますね。

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

3件のコメント

実父親の住む所は、ポツンと一軒家的な?田舎です。小規模多機能を利用していますが、一人暮らしで、他に選択肢がありませんでした。
施設入居をずっと考えていますし、いくつか、予約もしています。
家で暮らしたい父親の気持ちや、短期間施設で過ごして、暴言、暴力に、私が耐えられなかったから、結局、ほぼ毎日デイに行って帰って、お泊まりも嫌なので、家で、ほぼ寝るだけの生活をしています。
田舎には、選んで、行ける施設は、ないので、施設やケアマネさんに、思いがうまく伝えられなくて、辛いことも多いです。
一緒に暮らしてないし、好きでもなかった父親ですが、家族が介護しなければいけない、という強迫観念?みたいなものにも、襲われます。
と、いうか、介護サービス利用するにも、手続きとか当然家族がしなければいけないので。
父親本人は、のんびり、気ままに、暮らしたいのかも。
でも、一人暮らしも、限界が、近い?かも。
愚痴って、すみません。

ひまわりさま

田舎で小規模多機能があるところが、素晴らしいと思います。都会でもないことがよくあるので、ビックリしました。
それでもやはり施設は少ないですよね。
わたしも祖母や父は好きではなかったのですが、「自分のために」介護しました。決して家族だからというわけではなくです。

離れている分、わたしは自分でできないことはとにかくケアマネに相談します。人に頼り、制度に頼り、ツールに頼るという本のタイトル通り実践しております。

くどひろ様
すみません。ありがとうございました。
色々、悩んでばかりですが、、、そうですね、自分のためかも知れませんね。
施設やケアマネさんとも、きちんと向きあって、もちろん、感謝してますし、前向きに考えていくように、努力します。
結局は、お願いしなければ、いけないことばかり、なので。

しれっと。ですかね。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか