ものわすれ外来へ向かう直前30分の親子の攻防

コタツ

わたしも母も、ものわすれ外来へ行く準備は終わって、コタツに入りながらミヤネ屋を見ていたときのことです。

くどひろ
あと30分したら、診療所(ものわすれ外来)に行くからね
うん、わかった
くどひろ
まだ時間あるから、少し寝まーす
うん、わかった
くどひろ
ZZZ ZZZ
ねぇ、ひろ。何で行くの?車、タクシー
くどひろ
介護タクシー。もうちょっとしたら来るから、寝るね。
うん、わかった
くどひろ
ZZZ ZZZ
この前も病院さ、行ったえんちぇ~
くどひろ
この前って、2か月前だよ。病院行くとき、絶対それ言うよね~ まだ時間あるから、寝ます。ZZZ
ねぇ、何時にタクシー来るんだっけ
くどひろ
もう!!!昨日、部屋が寒すぎて寝られなかったから、少し寝かせて。今から寝るから起こさないで、分かった?
うん、わかった・・・・ねぇ、病院は何時に行くんだっけ?
くどひろ
えーーー。ほら、ホワイトボード見て。ホワイトボード。なんて書いてある?14時30分でしょ
そうね、14時30分ね
くどひろ
今からいうこと、繰り返して言ってみて。ひろは今から寝るから、起こさないで。ハイ!
ひろは今から寝るから、起こさないで

おー、自分の言葉を繰り返し言えた!と変なところで感動するも、時計は14時20分。結局、わたしは全く寝かせてもらえず、介護タクシーがやってきました。

認知症の症状ということは分かっていても、ここまでやられると、母がわざと自分を寝かせないようにしているのでは?と錯覚するほどでした。

この後、ものわすれ外来へ行き、認知症のテストを受けて30点満点中12点でした。テストで同じ野菜を何度も繰り返して答えたのですが、今思えばコタツの攻防の段階で、その予兆はあったのかもしれません。

母の横ではもう昼寝はしない誓った、我が家の1日でした。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか