認知症の母の影で「ごめんよ」と何度もつぶやいた話

先日、8年の遠距離介護の中で、今冬が最も寒いと書きました。

最高気温が0℃を下回る真冬日は、盛岡では平年だと、ひと冬に15日ぐらいとされているが、この冬は1月20日ですでに19日目。過去5年で最も真冬日が多い寒い冬になっている。

引用元:https://www.fnn.jp/articles/-/133711

とにかく寒いのに、認知症の母は電気毛布のコンセントをどこかに失くしてしまう、寝る前に電気毛布のスイッチを入れ忘れ、布団の中が冷たいなどの理由で、居間のコタツで寝る機会が多くなった話も書きました。

今日はその続きで、最終的に「ごめんよー、ごめんよー」とひとりつぶやいてしまった話です。

しれっとした顔で動いていた電気毛布

実家は室内も寒いので、居間のエアコン、台所の灯油ファンヒーターをしっかりつけて、暖かい環境をキープし続けています。加湿もやってますが、加湿器のせいで天井にシミが出来たという思い込みリピートが、数年にわたり毎日繰り返されています。

また、母がどうしても使うせんべい掛布団から、ニトリの「Nウォームは、あたたかい♪」の掛布団に替え、電気掛け毛布を寝る2時間以上前からセットして、寝室自体は寒くても、ふとんの中はあったかい環境を毎日用意しました。

ある日の、22時のことです。

実家2階の自分の部屋でカメラを見たら、母が1階の居間のコタツで寝ていました。下に降り、母を寝室に誘導し、布団に入ってもらったところ「寒い寒い」と言います。

電気毛布のスイッチは、ランプが光ってます。真冬に薄着で外に出た過去があるので、温度感覚がおかしいのかも?と思いつつ、布団の中に手を入れてみたら、本当に寒いのです。

ん? ランプが光っているのに寒いって、どういうことだ? その日はそのまま寒い布団で寝てもらうしかなく、翌朝、自分の部屋で電気毛布のテストをしたところ、問題なく暖まりました。

たまたま調子が悪かったのかな?と思いつつ、それから毎日、電気毛布の温度チェックをしました。温度調整部分のリモコンランプは光っている、だけど毛布は暖まりませんでした。

わたしは暗い寝室でひとり、こうつぶやいていました。

くどひろ

えっ? これ、いつから故障してた? まさかこの寒い冬の間、ずっと壊れた電気毛布で寝てた? うそぉ! あーーーー、気づかなくてごめんよー、ごめんよー

電気毛布故障のその後

普通なら、近所の家電量販店で新しい電気毛布を買えば済む話です。ところが認知症の母は、ボタンの少ないテレビシンプルリモコンを変えただけで、使い方が分からなくなる人です。

全く同じ型の電気毛布はないかとネットを探したのですが、見つかりません。しかも、明日朝は氷点下12度の予報。とにかく、すぐ電気毛布が必要でした。

家の押し入れをあさったら、使っていない比較的新しい電気毛布が出てきました。ところが温度調整のコントローラーが下の写真のとおり、全く違うのです。

左が新しい電気毛布、右が故障した電気毛布

これでは、わたしが帰京して母がひとりになったとき、電気毛布を使えない。ニトリのNウォームを掛布団と認識してくれなかったときのように、電気毛布として認識してもらえない。とりあえずその日は、わたしがセットした新しい電気毛布で寝てもらい、事なきを得ました。

次の日。すっかり電気毛布のことを忘れていたら、母が自ら電気毛布を敷いていたのです。おそらく、どちらもストライプ柄の電気毛布だったのと、温度調整リモコンは違くても、コネクタがほぼ一緒だったので、電気毛布と分かったようです。

ケガの功名

新しい電気毛布が稼働して、思いもよらぬいいことがありました。

母が起きる時間が、1時間から2時間遅くなったのです。介護者にとって、この1時間は大きい!朝4時に朝ご飯作り始めることもあったのですが、最近は6時頃になりました。まさに、ケガの功名。

しかし電源が入っているのに、電気毛布が故障しているとは思いませんでした。「ごめんよー、ごめんよー」とU字工事風な言い回しになってた自分を笑ってしまいましたが、本当に家電製品の思わぬトラブルは多いです。

皆さんも1度、古い家電を疑ってみてください。しれっと、動いてます!みたいな顔して、全く動いてないこと、あります。コロナ禍に、頑張って帰ってきてよかったです。

介護職の方は絶対気づかないところだし、妹でも気づかなかったでしょう。いつから壊れてたのかを想像するとゾッとしますが、とりあえず故障を見つけてホッとしました。

最新回の音声配信voicyは、あるたとえ話を用いて、介護の相談相手は超大切だよという回です。リスナーさんからのコメントの返事もあります↓

今日もしれっと、しれっと。


にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

6件のコメント

いつもありがとうございます。
お母様が、ゆっくり眠れるようになって良かったですね。

今の私の相談相手は、店員Bさんのようです。相談してもとりあえず様子見てみましょうとか、今まで通りそちらでお願いします、と言った返事が来るだけです。
私と主人の間では、担当を変えてもらった方が良いという話をしていますが、妹が難色を示しています。
工藤さんは妹さんと上手く連携が取れているようですが、私は妹と意見が合わず困っています。

いろいろありがとうございました。
私はVoicyの転職のお話の回がとても楽しかったです♪
ちょっと介護から離れた話だから良かったのかもしれません。
特別何かあったわけではありませんがとても疲れました。
また何か困ったことがあったら参考にしたいと思います。

sakoさま

ご家族同士で折り合いがつかない場合は、第三者(権威ある人など)をうまく利用する方もいますよ。
「A先生が言ってた」的な言い方で説得できた方、A先生に直接お願いしてそれとなく説得してもらうみたいな方もいらっしゃいますね。
特にケアマネさんは、介護に与える影響大だと思います。

sakoさま

放送はまだまだ続くので、介護以外の話もいずれ増える予定です。
しばらくは本流である介護の話中心でいくつもりです。voicy聴いて頂き、ありがとうございます!

何年も前から多くのことを参考にしています。
寒い地域の冬は大変ですね。
私自身もとても寒いことが苦手ですが、特養に入居されている方が「レッグウォーマー」を使っているのをみて、今年から私も試してみました。
すごく暖かいですよ!
昼間は足首だけ、寝る時は膝下まであるものをつかってみたら、靴下をはかなくても暖かいんです。ふくらはぎを暖めると体温もあがるとテレビでやっていました。
履く岩盤浴とも言われているそうです。
この時期、スーパーの靴下売り場、ドラッグストアなどでも売っていると思います。
工藤さんご自身もぜひお試しになってください。
まだまだ寒いのでお気をつけて。

reichanさま

ブログ読んで頂き、ありがとうございます!!
なるほど、レッグウォーマーですね。参考になります。

わたしは今、全身ヒートテック(極暖と超極暖)で過ごしています。これがなかったら、今冬は越せなかったかもしれないくらい助かってます。
レッグウォーマーも使ったら、最強になるかもしれません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか