認知症の母の同じ話が消えた日|重度まで進行して気づいた心境の変化

先月音声配信で話した内容をベースに、ブログ記事にしました。

母は2013年4月にアルツハイマー型認知症と診断されて、そろそろ13年が経過します。認知症は重度まで進行し、直近の長谷川式認知症スケールでは30点満点で0点。来るところまで来てしまった印象ですが、今も岩手の実家にひとりで元気に暮らしています。

言葉が出なくなった母との会話

認知症が重度まで進行して、大変になったこと。例えば尿便失禁、いわゆる排泄介護は重労働です。それでも工夫を重ねて、しれっと対処できるようになりました。

逆にラクになったことは、母が何年にもわたって何回も繰り返してきた同じ話ができなくなりました。話したくても、言葉が出てこないのです。

数年前までは、ご近所さんに関する作話を何度も繰り返していました。あまりの回数に「もういいかげんにして!」と何度も思ったし、実際口に出して「またその話!」と文句を言い、母が「そんなことないでしょ!」と言い合いになって、何度もケンカしました。

母がご近所さんの作話をしようとすると、こうなります。

ほら、あの、あの人がね。

母の雰囲気や言葉の端々から、ご近所さんの話をしようとしていることは、すぐわかります。また実家の立地が少し奥まったところにあって、他の家は道路沿いに立っているからうるさくて大変という話も、感覚的には100万回聞いてきたのですが、今はこんな感じです。

あのー、奥がさ。静かでね。車もさ。道路でね。

わたし以外の人が聞いたら、なんのことやらわからないと思います。

同じ話ばかりで気が狂いそうになっている介護者の皆さまへ

認知症の親が同じ話を何度も繰り返して、介護者がものすごくストレスを抱えている。こんなご家族は、全国に山のようにいると思います。

一方で認知症が重度まで進行すると、同じ話すらできなくなってしまうケースもあります。本当に不思議なもので、あれだけしつこいと思っていた同じ話が聞けなくなると、寂しいと思ってしまうから本当に困ったものです。

同じ話の繰り返しの先にあるものが「寂しさ」だとすると、介護者側の同じ話の受け止め方が少し変わりませんか?(本当に少しだけですよ)

「今しか同じ話の繰り返しはできないんだ」と思えば、ちょっとだけストレスが軽くなるかもしれません。本当にちょっとだけ。振り返ると、あの頃の母は同じ話ができていてすごかった、なんて思いもあります。

ちなみに母は同じ話はできませんが、同じ質問ならできます。

「今日はどこ行くの?」みたいな簡単な質問は、相変わらず何十回もするので、ホワイトボードに答えを書いてしのいでます。

トータルで考えると、同じ話の繰り返しによるストレスはだいぶ減ってラクになりました。

久しぶりに音声配信voicyのリンクを貼ってみました。音声とブログで内容は違うので、もしよかったら聴いてください、無料です。

今日もしれっと、しれっと。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(82歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて14年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【著書】
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