なぜ認知症を 「ニンチ」 と略されると腹が立つのか?

ひそひそ

先日、新しい民生委員さんと電話でお話したときのこと。

くどひろ
母は軽度の認知症なので、何日までに書類書いてと言われても忘れてしまいます。
民生委員
そうは見えませんでした。確かに 「ニンチの人」 だと、理解できないかもしれませんよね

ただこれだけなのに妙な違和感、そして軽くイラッとした自分がいました。なんでこんな気持ちになるのか、よくわかりませんでした。

「ニンチ」の議論ってすでにあったんですね

認知症を「ニンチ」と省略することについて という記事がすでにあって、大平怜也さんという介護のプロのご意見だと、

(1)そもそも日本語として意味がおかしくなる
(2)「ニンチ」と省略する人に対してマイナスイメージを抱く関係者が多い
(3)事実関係が誤って伝わってしまう
 
いろんなブログやSNSで、認知症を「ニンチ」と省略する人に対しての批判は多いです。

引用元:http://www.caretomo.com/carezine/article/34/199/?fr=CnRight

ざっくりと引用しましたが、記事元のけあZineさんは介護職向けのサイトです。わたしは介護職ではなく、介護家族なので別の視点で自分の違和感について考えてみます。

ブログやSNSで批判が多いんですね・・・わたしと同じ違和感を持っているんでしょうか?

名前で呼ばれてない

今までお世話になった病院、デイサービス、ヘルパーさん、すべて母を名前で呼んでくれます。苗字で呼ばれたことはありません。母はそのことを心地よく思っていて、わたしもいつしか当たり前のように思っていました。

民生委員さんとは面識もなく、電話で話しただけです。おそらく介護職経験のある方で、悪気もなく 「ニンチの人」 と言ったと推測します。

わたしの人生を変えた本のひとつ、デール・カーネギーの超ベストセラー 「人を動かす」 。人に好かれる6原則の3番目に、

名前は、当人にとって、最も快い、最も大切なひびきを持つことばであることを忘れない。

とあります。介護職のテキストは読んだことがありませんが、きっとこのことを分かって実践しているんだと勝手に思っています。さらに、

フランクリン・ルーズヴェルトは、人に好かれるいちばん簡単で、わかりきった、しかもいちばん大切な方法は、相手の名前を覚え、相手に重要感を持たせることだということを知っていたのである。


結局、「ニンチの人」 は名前ではない、快くないし、大切なひびきも皆無・・・だから腹が立ったんだと思います。

プロの隠語っぽさがイヤ

医療・介護業界の人が使う 「隠語感」 がイヤなんじゃないかと。隠語って特定の仲間だけで通じるものなので、下記写真のようなヒソヒソ話を連想してしまいます。

ひそひそ

少なくともわたしの周りでは、ニンチという人は1人もいませんでした。こういった感情になる介護者って、いますかね?わたしだけかもしれません。

アルツハイマー型認知症の人を 「アルツ」 って言うのも、わたしは好きじゃないです。でもピック病はピックって自分で言ってるので、もはや個人の主観でしかないです・・・

結局何が言いたいかというと、カーネギーの原則はこんなところでも当てはまるんだなって。あの本を介護目線で読み直したら、違った感じ方になるかもしれません。

母: 「こんなに人生で名前呼ばれたことないわ」

確かに出てった父も、「おぅ」 と呼んでました。ちなみにわたしもみなさんに影響されて、「お母さん」 と呼んでません。名前で呼んでます。本人は違和感あるみたいです(笑)

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか