認知症介護と殺意について真剣に考えてみた!

認知症介護殺人

今日はディープに、認知症介護と殺意について考えてみました。

清水由貴子さんの死

遠距離介護コミュニティーNPO法人パオッコさん主催の 「パオッコサロン」 に参加した時、参加者の女性が突然涙を流し始めました。なぜ泣き出したかというと、女優・清水由貴子さんの介護による壮絶な「自殺」を思い出したからです。

タレント清水由貴子さんが21日午後1時30分ごろ、静岡県内にある冨士霊園で亡くなっているのが発見された。49歳だった。父親の眠る墓石の前で倒れており、硫化水素を吸い込んで自殺したとみられる。そばには車いすに座った母親がおり、衰弱していたものの命に別条はない。独身だった清水さんは06年3月、母の介護を理由に長年所属した事務所を辞めており、芸能界から事実上引退していた。長年にわたる母の介護疲れが、清水さんを自殺に追い込んでしまったのだろうか。(2009年4月22日・朝日デジタルより)

この事件は当時、衝撃的なニュースとして取り上げられました。介護をする立場になった今、この事件を改めて振り返ると、とても他人事とは思えない話です。この事件から、「介護」と「殺意」の関係が見えてきました。

一生懸命な介護の先にある殺意

・介護から1日も早く解放されるためには、この人を殺して早くラクになりたい
・何を言っても言う事を聞かない、いっその事殺してしまいたい
・介護にとにかく疲れた・・・殺せばこの介護疲れから解放される

一生懸命やればやるほど、その 「殺意」 は深いものになります。介護生活が長くなり、ストレスはたまる一方。その頃には社会からも孤立していて、話せる人もいない。「殺意」 が芽生えることは決してよくないことですが、その壮絶な介護生活ではやむを得ないことです。

「介護で見返りは期待してない」

誰もがそういうと思います。でも、一生懸命介護する先には、「よくなって欲しい」 という気持ちと同時に、「わたしを介護から早く解放してほしい」 という気持ちが全くない人はいません。

「介護は無償の愛」 と言われます。「見返りを求めず、与え続ける」 って美しいんですが、子育てと違って、いつまで続くか分からない介護において、ストレスなしで与え続けることは、とても難しい事です。この、いつまで続くか分からない不安も、「殺意」 の原因です。

いろんな事を考えて、「殺意なんで抱いてはいけない」 そう気づきます。行き先を失った 「殺意」 の矛先は、今度は 「自分」 へと向けられます。

「殺意」への自己嫌悪、そして「自殺」

・「殺す」 なんて、なんてこと考えてしまったんだ・・・
・「殺す」 ぐらいなら、いっその事自分が死んでしまえばいいんだ・・・

「人を殺すこと」 は良心に背く行為なので、罪の意識に襲われます。でも、「自殺」は自己完結。良心に背くことなく、正当化できてしまいます。人へ向けられた「殺意」が、今度は自分へ向かいます。でも、”実行する” には勇気が必要で、そう簡単に実行できるものではありません。

「殺してしまいたい → いや自分が死ねばいい」

日々そんな事を考えているうちに、今度は 「介護うつ」 へと向かいます。実行する勇気がない人も、この状態に陥ると、病気が実行させてしまう事があります。恐ろしい 「殺意」 のループの完成です。わたしはそこまで深刻ではない!という人も、次のような事を考えたりはしませんか?

「殺意」 まで行かなくとも、考えること

わたし自身、

「もしこの人が亡くなったら、介護生活は終わるんだよなー」

と思った事は、何度もあります。「殺意」 まで行かなくとも、こんな事を頭の中で考えながら、日々暮らしています。わたしだけではなく、介護している人ならば誰もが経験しているのではないでしょうか?日々繰り返される、介護による殺人事件のニュースを見たら、

「そうはなりたくない!」

と思いながらも、どこかで 「分からなくもない」 という気持ちも、否定できないのではないでしょうか?自分だけじゃなく、介護に関わる人すべて、どこかでこんな気持ちをループさせているのです、無意識のうちに。

全力で介護してはいけない!という結論

いろいろ考えているうちに、やはり 「全力で介護してはいけない!」 んだなって。全力でやるべき事は、介護の体制作り や 介護保険を活用すること や 施設探し をすることであって、自分で介護を全部やらないよう、人の力を借りる事に全力を注ぐ のが大切だと。

また、「殺意」 のようなものを抱いてしまう事は、介護においてはごく自然なことであり、自分を責める必要はない ということです。介護される側ばかり注目されますが、介護する側の方がもっと大切です。あなたがいなければ、介護は成り立たないのです。

「自分を大切に、自分の生活を優先する」

という姿勢で、介護はするべきです。どんなに一生懸命介護をしても、「介護される側の天命」って決まっているんですよね・・・今回、祖母の死を目の当たりにして、亡くなる事の意味や、介護の姿勢を改めて考えさせられました。こういう文章を書いている事自体、考え過ぎなんですよね(笑)

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

7件のコメント

{自分を大切に 自分の生活を優先する}とは言うけれど 認知症、寝たきり(本人は動けるつもりで起こせ、起こせと叫んでる)普通食は食べれない父と、認知症食いボケの母の為、朝は朝食、昼休みは10数キロ離れた会社から毎日昼、夕食を作りに帰り、残業もできず低収入、夜も介護で寝不足、毎日おむつ替えの訪問介護と週2回のデイサービスは利用してるが、年金は2人で2カ月17万程、交代で入院はする…ケアマネには施設入居を進められるが金銭的に無理でしょ、机の
上にはいつも督促状(農機具代も有)…離れて暮らす姉の私は年2回帰郷時には溜った支払(一部)と一か月一回レトルトなどの食料を送る事位しかできず、今は親より弟が心配です。山、田、畑と土地はあるけど買う人いない…無理はさせたくないけど…

いやー昨日はやばかったです。夕飯の支度してるときに母が物盗られ妄想始まって。包丁持ってる時にやられると本当危ない。包丁持つ手に力入ります。夕方に起きるのやめてほしいですねー。
包丁持ってなければまたいないとこで「死ねよ」ってつぶやいてるだけで済んでるんですけど・・・。

syumitektさま

包丁はやばいです・・・・包丁は・・・

syumitektさん はじめまして。
もう一年以上も前のコメントですが、思わず共感してしまったので、私もコメントします。私の母も物とられ妄想です。 包丁をもっている時に、母の妄想が出ると、私もぐっと包丁を握ってしまいます。  最近、自分が怖いです。
母の妄想で、私の気も変になりそうです。

まりえさん、初めまして。私のコメントに共感していただきありがとうございます。
物盗られ妄想はホントきついですよね。 よく介護の本なんかに「借りてたことにして返す」なんて書いてありますけどアレウソですから。 それで済めばいいけど母は「盗んだから返しに来たんだろう」となりましたよ。 それはそうですよねえw
もううちの母はものとられはめったに起きないので笑って済ませられますけど

お薬で物盗られ妄想に効きそうなのは抑肝散ですね。うちの母もこれのおかげ・でなくなったようなところはあります。 私も抑肝散飲んでます。不眠、幻聴、早朝覚醒がありますので。
親子で同じ薬飲んでるのはなかなかないですよ。

あと時期的なものもありますので我慢、ではなく流しましょう。
相手が興奮してなければまだ受け流せると思うので興奮しないように。

アリセプト5mg飲んでるようだと大変ですよ。あれ興奮しますから。
まず興奮を抑える というかなくすことです。興奮してる人に何いっても無駄です。
後どうしても無理なら逃げることです。 買い物でもなんでもいい、理由をつけて逃げましょう。 家の中だと追い詰められます。 そのうち何分かするとおさまるかわかってくるのでそうしたら帰ればいいんです。
相手はおかしいんです、まともに対応してはいけません。逃げてる間、他の人に迷惑がかかる?そんな余裕があるなら逃げなくていいでしょう。 余裕がないなら逃げましょう。
近所の人だってそれぐらい騒いでいたら「おかしいな」とは思うけど口出ししては来ないはずです。「触らぬ神になんとやら」ですから。
もし、まわりにご迷惑をかけたようならあとで事情を話して謝ればいいんです、それで迷惑だ、なんていうひどい人はそうそういません。

うちはすごかったですよー 祖母の形見の結婚指輪までないと言い出して、私に彼女がいてあげたのを玄関で見たっていいましたからねw そんな彼女いたらこっちが見てみたいって思う状態なのにww

それで犯人がわからないと「泥棒がいる!」っていって「気持ち悪いこの家」って言ってでていくんですよ・・・ 気持ち悪いのはその頭だろ・・・と。
おっと、いい加減長いですね。すいません、40kaigoさん。

ブログ主を差し置いてしまって申し訳ないです。
・・・私もブログやろうかなあ。 でもツイッターまとめるだけで一杯なんですよね。

syumitektさま、まりえさま

<syumitektさま>
まりえさんのコメント気づいてくれるかな~と少しだけ気にかかってましたが、さすがコメント数トップのお方!すぐ気づいて頂けてよかったです。このブログのコメントに文字数制限はありませんし、たくさん書いて頂いて構いません。どんどん主をスルーして頂いて構わないです、いろんな方がこのブログを利用して問題解決して頂ければ、こんなにステキなことはありません。

そしてさすがの回答、ありがとうございます!!!

<まりえさま>
コメントありがとうございます!

うちも物取られ妄想があって、もう3年目に突入しています。結局のところ本人の「取り繕い」なので、それが分かっていると微笑ましくも思えます。お気に入りのはんこ付きボールペンがよくなくなるのですが、ヘルパーさんが持って行ったとか必ず言います。結局は本人がどこかへしまい忘れているけど、分からないから言葉で取り繕うという行動の表れなんですよね。

自分自身も都合のいい言い訳をすることがあります。同じことなんですけど、理性が伴ってないので言い方が乱暴だったり、人を傷つけるような事になります。それが認知症なのでしょうがないかなと思ってます。

syumitektさまと同じで、わたしも一旦逃げます。2分や3分、場を離れるだけで話題は次へ変わっていることが多いです。また何か役割を与えることで改善されます。うちの場合だと、デイサービスで料理をするという役割を今年から始めたのですが、興味のほとんどがそちらに行ってから、あらゆる妄想が激減しました。

独居で妄想する時間がたっぷりあった母は作話が多かったのですが、役割を与えたことで改善しました。母のデイ話が妄想の可能性はありますが、わたしが知らない内容なので、その妄想も受け入れられます。

認知症の 「妄想」 は3種類ある!
https://40kaigo.net/care/alzheimers-disease-care/2450/

ここに書いていいのかどうかわかりませんが、私もブログを始めました。
といってもツイッターの垂れ流しになるので非情に見づらく関係ないことも乗っています。
そしてまだ試行錯誤するので見た目が変わったりいろいろするかと思います。

一応アドレスはこちらです

40kaigoさんみたいに記事を書けるといいのですが・・・。
ツイートしてることが誰かのヒントにでもなれば、と思います。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか