【手足の不自由な母】手すり設置に8年もかかったワケ

手すり

先日、ケアマネとヘルパーさんと、認知症の母の今後について話し合った記事を書きました。

要約すると、ヘルパーさんによるデイサービスへの送り出しの回数を、週1回から2回に増やすというもの。そしてもうひとつの話題が、今日の記事「手すり」でした。

バリアフリーの反対語「バリアフル」

この話し合いの数日前、偶然、理学療法士さんと訪問リハビリの最中に「手すり」の話をしました。

母はシャルコー・マリー・トゥース病(CMT)という難病を抱えていて、手足の筋肉が萎縮しており、日常生活に不便を強いられています。

例えば、つま先を上げることができないのでスリッパが履けず、歯医者も靴下のまま(すぐ下の写真)。ペットボトルのふたが開けられない、自動販売機にお金が入れられない、立ち上がり動作が緩慢などがあります。

歯医者の写真。わたしは左、母は右。

母のCMT病は中学生の頃から発症しており、2007年の検査入院(わたしの介護離職1回目)で病名が判明しました。手すりの設置は何回か検討しましたが、意思を持って見送りました。

理由は、母の独特な立ち上がり。例えばコタツのテーブルを手すりにする、タンスの引き出しを1段出して手すりにするなど、あらゆるものを手すりにして生活してきました。

とても大変そうに立ち上がる母ですが、この立ち上がり自体をリハビリと考え、敢えて手すりは設置しませんでした。バリアフリーを進めるところを、その逆を行く「バリアフル」な環境です。

そんなバリアフルな生活を8年やったのに、なぜ今、手すりを設置するのでしょう?

認知症の進行で習慣が変わった

認知症の進行によって、母の習慣が変わりました。

毎朝、お湯を沸かしてポットに入れる習慣がなくなり、ポットが不要になったのです。(上の写真)ポットのために古いラックもそのままにし、ラックを手すりにしていました。

そのラックがグラついていたので、母の立ち上がりのたびにグラグラしていたのです。これが危ないと思って理学療法士(PT)さんに相談し、手すりを設置。あまり利用していなかった歩行器は返すことにしました。

ポットが乗ったラック
手すり
手すり設置
歩行器
あまり使わなった歩行器

数日後、ケアマネさんとの話し合いから、福祉用具専門相談員が来ました。わたしから母の様子を説明。ポールダンス的な手すりや床置き手すりがありましたが、母はハイハイで手すりのところまでやってくるので、マットつきの手すりになりました。

母は、この手すりを気に入ってくれたようです。わたしは手すりは1か所と考えていましたが、ヘルパーさんは、他の場所に必要と考えていました。

手すりなし
手すり設置

こちらは、ステップ付きの手すりを提案されました。義弟の手作りステップを使っていましたが、こちらも実はグラグラ。しかも、母はドアノブを手すりのようにしていました。新しい手すりのおかげで、転倒リスクは減ったと思います。

手すりは介護保険サービスで、1台あたり1か月400円ほど(1割負担)でレンタルしました。介護保険の20万上限の住宅改修の権利はまだ使ってませんが、いずれ使う日はくるでしょう。

8年バリアフルな生活を続けてきましたが、認知症の進行、コロナ禍でなかなか帰省できないなど、状況が変わってきました。これからはバリアフリーな箇所も増やしつつ、バリアフルな生活も母には頑張って欲しいと思ってます。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか