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認知症の母にどうしても使ってもらえないある調理器具の話

フライ返し

認知症になる前の母は、料理に関することに、とにかくこだわる人でした。

今でもたくさんのタッパーにシールが貼ってあって、文字こそ消えてますが、たくさんの香辛料や調味料を使いこなしていた「跡」が残っています。

認知症が進行するにつれ、しょうゆ、塩、砂糖、煮干し、みそ 以外の調味料を使わず、鍋や包丁など、調理器具へのこだわりもすっかり消えてしまいました。

テフロン加工のフライパンにあった大量の傷

母のこだわりがなくなった今、わたしはニトリで、調理器具を買い揃えています。

ここ数年で何度も買い替えているのが、フライパンです。朝食の目玉焼き、昼食のラーメンを茹でるとき、夕食の焼うどんなど、何でもフライパンで調理します。

どの鍋をどう使いこなしていいのか分からなくなってしまったので、母は目に飛び込んできた調理器具で料理をしてしまいます。

その主力であるフライパンが、やたらと傷ついています。使用頻度が高いからしょうがないと最初は思っていたのですが、新しく買い替えたフライパンもすぐに傷だらけになってしまいました。

何かがおかしいと思い、母の料理の様子をじっくり観察してみると、傷の原因が分かりました。

理由は、「鉄製」のフライ返しを使っていたからです。(記事タイトル下の写真)これではフライパンに傷がつくということで、早速ニトリに行って「木製」のフライ返しを購入しました。

これでフライパンの傷問題も解決だと思っていたのですが、しばらくして買い替えたはずのフライパンが、また傷だらけになってしまいました。

木製のフライ返しは意味がない?

木製のフライ返しなのに、なぜフライパンに傷がつくのだろう?

再び、母の料理の様子を観察すると理由が分かりました。

そもそも、木製のフライ返しを使わず、鉄製のフライ返しで料理を続けていたのです。

認知症になる何年前から使ってきた鉄製のフライ返しは、母の記憶そのものなのです。新参者の木製フライ返しの存在なんて、記憶に残りません。新しい物ほど、母の記憶にはインプットされないのです。

剥げたテフロンを食べたらさすがに体に悪いだろうと考えたわたしは、泣く泣く母が愛用してきた鉄製のフライ返しを隠し、木製のフライ返しだけにしました。

これで解決!と思いきや、やはり木製のフライ返しは使ってくれません。繰り返しますが、母の記憶には木製のフライ返しはインプットされないのです。

しばらくして、今度はプラスチック製しゃもじを使って、炒め物を始めてしまいました。今度は、しゃもじが溶けてしまうかもしれません。

認知症の母の調理器具選定は、慣れ親しんだもので固定されているようです。この話は反響の大きかった、下記の日用品を変える話と全く同じです。

わたしが帰省しているときは、何度も木製フライ返しを持ってもらって、少しでも記憶に残るよう努力を重ねました。1年くらいはやったでしょうか?しかし、母の中のフライ返しは鉄製のままであり、なければプラスチックのしゃもじを使っています。

介護で努力したい!とは思ってないのですが、こういう小さな積み重ねは嫌いではありません。新型コロナウイルスの影響で、こういった小さな積み重ねがすべて吹き飛んでしまったのは、本当に残念でなりません。

認知症 日用品

認知症の人の環境を変えないのは「日用品レベル」まで



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2 件のコメント

  • くどひろさん、お久しぶりです。
    自粛要請中もネタに苦労されていたように思われますが、毎回記事には目を通していましたよ。
    新刊も無事発売されるようで良かったです‼︎

    フライ返しの変更は上手くいかないようで困りますよね。もしかしたら木製は色や形状が違うのも原因のひとつではないでしょうか。例えば、シリコン製で縦に穴が幾つか空いていて先の輪郭(真っ直ぐ、または斜め)が同じものを試してみてはどうでしょう。色もステンレスに近いグレーのものにするのも良いかもしれません。

    それから、母は先月に老健から介護付き施設に移りました。予約して半年です。早いような遅いような…。
    こんな状況だったので私はノータッチ、全てスタッフにお任せになりました。有り難いことです。
    母は見学した時も「ホテルのよう」と好評で、白鳥が飛来する池の近くなので環境も良いです。私も高校時代、近所の図書館によく通っていたので馴染みがあります。
    現在も面会制限は続いていて、施設内でのモニター面会は出来るようになりましたが、県外からの家族はまだ施設の中に入れないので少なくとも今月末までは利用不可です(外からの窓ガラス越し対面は可能)。
    現時点では、今後指定感染症から外れても、せめて治療薬がないと以前のようには戻るのが難しいかもと、スタッフはおっしゃってました。元々毎年12〜3月はインフルエンザで面会制限あるので、このままだと通年制限になってしまいそうです。

    私も2月の帰省以降盛岡に行っていないので、そろそろ帰省をと考えているところです。
    くどひろさんもそうですよね。お母様は何ごともなく、しれっと迎えてくれるような気がしますよ〜。

  • みーしえるさま

    ご無沙汰しております!

    はい、1年かかってやっと新刊ができました。

    みーしえるさまのおっしゃるとおりですね。単純に傷がつくからと木製を購入したのですが、色や形状まで考えないといけませんよね。ありがとうございます!

    治療薬がないとという話、本当に厳しいですね。SARS,MERSだって対症療法のみで、未だに治療法が確立されていません。インフルエンザだって、流行する型だけでなくすべての型の予防接種を受けている方は、そんなに多くない気がします。制限レベルは事業所ごとに違うようなので、こまめに連絡して確認するしかないかもですね。

    今週は帰るための調整作業にあてております!

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    ABOUT US

    介護作家・ブロガー
    1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。認知症の祖母(要介護3)と母(要介護2)のW遠距離介護からスタート、悪性リンパ腫の父(要介護5)の在宅介護も経験。現在も東京と岩手を年間約20往復、遠距離在宅介護8年目。NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」で介護の模様とブログが紹介される。著書:ムリなくできる親の介護(日本実業出版社)医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか

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