認知症介護の安全対策でベビーゲートを設置した理由

岩手の実家に赤ちゃんはいませんが、認知症介護の安全対策のためにベビーゲート(ベビーフェンス)を設置しました。取り付けまでの経緯と、なぜ必要になったのかについてお話しします。

手足が不自由な母が2階に上がる

母は手足が不自由で、さらに認知症の進行や身体の衰えとともに、わたしの部屋がある2階に来ることはなくなりました。

なので母に見つかったら困るもの、例えば季節に合わない服は2階に置いておけば、夏に厚手の服を着る心配はありません。洗濯物も母に見つかると、濡れたまま取り込んでしまうので、ヘルパーさんはいつも2階に干しています。

他にもヘルパーさんの連絡帳も1階に置いておくと、母が片づけて紛失するし、わたしからヘルパーさんへのメモも捨てるしで、こちらも2階に避難しました。

この中でなくなると困るものの筆頭が、デイサービスに持って行くバッグです。バッグの中にはバスタオル、タオル2つ、リハパン2枚、靴下、連絡帳、ババシャツなどが入っていて、これをヘルパーさんがデイの前日にセットしてくださいます。

しかし母がこのバッグを見つけると、全部片づけてしまうのです。翌朝ヘルパーさんは限られた時間の中で連絡帳を探し当てて、バスタオルを再セットするみたいになるので、デイサービスから帰宅した際に、送迎スタッフさんが階段の踊り場にバッグを置いて隠す運用にしました。

階段の踊り場にあるはずの連絡帳が居間に!

ある日のことです。

1階にある居間の見守りカメラに映っていたのは、デイサービスの連絡帳でした。あれ? 踊り場に隠しておいたはずなのに、何で? 見守りカメラの映像で確認したら、母が2階に上がってバッグを回収して、中の荷物を片づけたり連絡帳を読んだりしていたのです。

母はバッグの中に財布が入っていると思い込んでいるので、バッグに相当執着しています。だからスタッフの方が踊り場に隠す姿を覚えていて、それで取りに行ったのだと思います。そこだけ覚えていること自体不思議ですが、お金は大切だからそういうことなのかもしれません。

実はこれまでも何回かあったので、いずれ対策をしようと思ってました。しかしデイサービスからも、バッグが無くなるとの報告を受けました。バッグより、お母さんの階段からの転落が心配だと。確かにそっちは心配です。それで、すぐに対策しました。

認知症介護にベビーゲート

ケアマネさんと対策を練る中で、福祉用具専門相談員さんなら何かいいアイデアがあるかもしれないとのことで、ポータブルトイレの処理袋の配達のついでに来てもらって、母が2階に上がらない方法の提案を受けました。

でもまずはわたしが前から考えていた、ある柵の設置を試してみることにしました。柵の選定の際に最初に思いついたのは、ベビーゲート。赤ちゃんが階段から転落しないようにするための柵で、赤ちゃん対策の商品は認知症介護に応用できます。(冷蔵庫のロックもそう)

Youtubeでベビーゲートを調べて良さそうなものを決めて、階段の幅を採寸して選んだ商品はタンスのゲンで売っていた「現役ママが考えたベビーゲート」で、4999円でした。

開封前のベビーゲート
2階に上がれないようベビーゲートを取り付けた

ネーミングが良かったのですが、ポイントはゲートのロックです。南京錠だと、ヘルパーさんが開錠に時間がかかって大変です。この商品はオートクローズ機能がついていて、勝手に閉まって同時にロックされる仕組みです。

ロックを解除しないとゲートは開かない

洗濯物を持ちながら、腕や腰等でポンって押しても閉まります。さすが現役ママならではのアイデアだと思いました。

わたしが帰省したときは基本開けっ放し

ベビーゲート取り付け完了!

階段の構造上の問題で、30分も要してしまいましたが無事取り付け完了!普通のところだったら、5分で取り付けられると思います。 

母がゲートを突破できるかどうかは、わたしが帰京したあとに結果が分かります。介護職の方から聞いた話では、わが家と同じように認知症の方の家に取り付けたら、ゲートを突破されたようです。

母はワンタッチでカチッとなるロックでも戸惑うので、おそらく突破できないと思うのですが、さてどうなるでしょう? デメリットはわたしの階段の上り下りが不自由になったくらいですかね。わたしが転落しないよう、気をつけないと。

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5件のコメント

いつも楽しく時に切なく拝読しております。
60代の私(長女)が80代の母(要介護1)を同居介護しています。
今回の記事もそうですが、クドヒロさんの愛情にあふれ知恵をしぼった介護に感心しております。
わが家も次から次へと起きる母の『困ること予防』に手を焼いております。
日々安全と手間・財布を天秤にかけて、試行錯誤しています。
先日も紙パンツの中にトイレットペーパーを何重にも折りたたんで仕込むという行動が止まらず頭を抱えてしまいました。
衛生的でないこととトイレ詰まり(トイレットペーパーの間にティッシュを挟み込むという厄介なことをしてくれるようになったので)を防ぐためトイレットペーパーをなくす(手の届かない棚にしまう⇒家族は使用する度に出し入れする)という荒業(笑)にでました。
トイレットペーパーの代わりにはお尻拭きを置きました。(濡れているのでパンツに挟むことはしません。)
本人はイジワルされていると感じていますし、家族はたいへん不便でお互い何のメリットも感じられませんが仕方ないと思っています。
今までもそうですが母の自由をどんどん奪っていく私は怖いヒトになっていて切ない限りです。
実は何が一番堪えるかというとこの『切なさ』です。
徒労感と罪悪感が半端ないです。
クドヒロさんはどのようにこんな感情をやり過ごしていらっしゃいますか?
家族やケアマネさんはじめ介護スタッフの支えがなければ到底続きません。
このようなもて余す感情のおさめ方にアドバイスがございましたら是非お聞かせいただきたいです。
日々寒くなり冬に向かっての対策にお忙しいと思います。
お母さまをはじめご家族の皆さまもお身体大切になさってください。
いつまでも応援しております。

山野井さま

ありがとうございます!

トイレットペーパーの折りたたみ、うちもあります↓
https://40kaigo.net/care/alzheimers-disease-care/45483/

わたしも自由をたくさん奪っていますが、割り切るしかないと思ってやっています。こんな方針で考えています↓
https://40kaigo.net/care/home-care/49518/

感情の収め方というか、いつも考え過ぎないようにしていて、音声配信のほうでこんな話をしました↓
https://voicy.jp/channel/1442/641328

母より大切なのは自分自身だといつも思っていて、疲弊しないための方法を考えて工夫して、それで発信を続けている感じです。これらのブログ記事や音声配信が、山野井さまのお役に立てたらうれしいです!

貴重なアドバイスありがとうございました。
気をとりなおすコツを模索しつつ頑張りすぎずこれから過ごしていこうと思いました。
明日も良い1日でありますように!

初めまして。介護が始まった当初からいつも参考にさせていただいています。デイサービスの荷物ですが、うちは玄関入ってすぐの所に宅配ロッカーを置いて、そこから出し入れするようヘルパーさん・デイサービス送迎の方にお願いしています。https://store.shopping.yahoo.co.jp/l-design/ys-a08855.html

やまゆりさま

宅配ロッカーいいですね、うちでも設置できそうなロッカーです。
ヘルパーさんの他のお仕事や母の見えないところに隠すことも考えると、うちはこれがベストだと思っています。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか