コロナ禍で介護が自分事になるスピードが加速している

新型コロナウイルスの影響で、親に会えない、病院や施設で面会できない。

会えない時間は不安の増幅装置になる一方で、自分の仕事や生活を優先してしまうことにもなる。特にまだ介護の必要のない人にとっては、親自身への興味を失うきっかけにもなる。

わたしも遠距離介護が終わって岩手から東京へ戻ってくると、自分の生活に集中してしまって、認知症の母のことを忘れてしまうことがよくあった。今は毎日、見守りカメラで確認しないといけなくなってしまったが。

コロナ禍で、時代の変化のスピードが加速している。働き方が変わり、仕事も減ったり、失ったりしている人も多い中、介護が自分事になるスピードも一緒に加速する。

介護はどこか他人事で、避けて通っていた人も、コロナの終息とともに介護が自分のところへ猛ダッシュでやってくる。介護中の人も、以前とは違うステージへ進まなくてはならない。

コロナ禍で加速する2つのこと

コロナ禍で加速している、2つのこと。

1つ目は、高齢者の健康二次被害が加速する。「withコロナにおけるエビデンスに基づく現在の健康課題について」という、自民党への提言書を抜粋した。

・高齢者の約 80%が外出や会話の減少を実感し、とくに趣味活動や友人と会えないことをストレスに感じ、結果的に認知機能の低下をもたらす可能性を指摘した
・対象とした高齢者の内40%以上の人で外出の頻度が著明に低下、また13%が週 1 回未満の外出頻度(閉じこもり傾向)まで低下していた。その結果、欠食が起こる等の食の状況(栄養管理)にも悪影響を及ぼしており、さらに人とのつながりや社会参加の低下だけではなく、様々な身体機能も低下も確認し、フレイルが進行している可能性を示唆した
・長期化する外出自粛による運動不足や人との交流の減少による会話不足は、免疫能の低下も招き健康二次被害も引きおこす可能性が高い

引用元:http://www.swc.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/08/56e5d7b69f7e0aab969b07f4469c79ab.pdf

自粛期間が長期化し、もっと寒くなると高齢者の活動量はさらに低下する。母が生活不活発病になり、コタツから1日出なくなって立ち上がれなくなったときは本当に焦った。ワクチン接種ができない今は、しばらく我慢の時間が続く。

2つ目も同じ資料からの抜粋。こちらは希望が持てるお話。

高齢者であっても、ICT 利用者は増えており、今回のコロナウイルス問題を契機に、オンラインのビデオ会議システムを使い、他者との交流を増やしてみたいという高齢者が半数を超えるという調査結果もある。世界保健機関(WHO)は 2020 年から2030 年を「健康長寿の10 年(Decade of Healthy Ageing)」と位置づけ、世界一の長寿国日本の経験と先進的な取り組みの世界への情報発信への期待は大きい。国連が出した新型コロナウイルスに関する報告書でも、高齢者が孤立することのリスクやデジタル機器を用いて高齢者の孤立を防ぐ必要があることを指摘している。

ICTとは、Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。メールやチャットもそうだし、引用文にあるオンライン通話なども含まれる。今まで苦手だった高齢者の皆さんも、いよいよオンラインやツールに積極的になっているという変化だ。

こうしたツールの利用は、このブログや本でも8年前から紹介し続けていた。しかし「便利なのね~」の一言で終わり、スルーされることもよくあった。

それでも講演会で見守りカメラの映像を参加者の皆さんに見てもらったり、スマートリモコンで熱中症から命を守る話をしたりすると、多くの人が興味を持ってくれた。

そしてコロナ禍で親に会えない今、こうした介護の工夫が急に注目された。今年だけでテレビに6回も取り上げて頂き、新聞、週刊誌の取材を受けた。どの取材でも、必ずツールの話が含まれていた。これほどツールのありがたさが理解され、変化のスピードが加速すると思っていなかった。

なかなか親に会えないからこそ会えた1回を大切に!

わたしの遠距離介護のペースも、2週間に1回から2か月に1回へと変更を余儀なくされた。なかなか会えないからこそ、実家の見守りを強化し、現在もどんどん変更している。今しっかり強化すると、この先の遠距離介護の不安は解消されるし、ラクになると思っている。

しばらく親に会えていない人は、久しぶりに会う1回を本当に大切にして欲しい。気持ち的な部分も大きいが、親の見守りの態勢を整える時間もぜひ作って欲しい。

年明けはコロナ禍の3回目の帰省になるが、離れていても認知症介護ができるよう、介護保険サービスもツールも毎回見直している。次回も相当見直す予定でいるが、コロナがなければここまで強化しなかったと思う。

具体的な工夫の数々は、今年7月に発売した新刊『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)に書いた。

NHKあさイチのディレクターさんもこの本を購入して連絡してきたし、メディアの多くの方がこの本を買って、本の内容を詳しく教えて欲しいと連絡してきた。コロナ禍でなかなか親に会えないから、必要な情報なのだと感じた。

まさかの自分の本のオチで、ごめんなさい!お盆前とこの年末年始に、特に読んで欲しい本なので記事にしました。Amazonレビューもすでに20本となり、過去最速のペースで本の感想を頂いています。

年末年始が近づき、親への意識が高まっている今、次回実家に帰ったときのことを想像しながら本を読んでみてください!もし帰省できる機会が来たら、本の内容を実践して態勢を整えて欲しいです。

親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと

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工藤 広伸
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今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

今回の文章はいつもにまして、くどひろさんの介護や自分の仕事に対する姿勢が真っすぐに伝わる
熱い、簡単に言っては失礼に当たる程の力を感じ、私の気持ちも奮い立たせていただきました。ありがとうございました。
   

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか