在宅介護の限界はどこに設定していますか?

「ムリ!自宅の介護はもう限界!」

在宅介護に限界を感じ、介護施設を選択するご家族はたくさんいます。あるいは自分の家族や仕事、距離的な問題、本人の意思などから、在宅介護を経由せずに最初から介護施設を利用するケースもあります。

どのラインを超えたら、在宅介護はもうムリと感じるのか? その限界値は介護者の考え、家族の考え、介護されるご本人の考え、相談した相手の考えなど様々です。

一般的な在宅介護の限界値とわが家の限界値の考え方の違いのお話です。

介護施設を利用するきっかけの実例

好調発売中のわたしの本『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)でも、介護施設を決断する例を取り扱っています。ほんの少しだけご紹介すると、

  • 介護者自身の健康問題が理由で、自宅で介護ができなくなった
  • 老老介護で負担が大きい
  • ご近所に迷惑をかけた

まだまだありますが、いろいろなきっかけで在宅介護の限界がやってきます。こうした一般的な例を本に書きながら、あれ?自分の話は一般的な例ではないので、本には書けないと思いました。

わが家の在宅介護の限界値

わたしの場合、

「どうやったら限界値を超えずにいられるか」

を常に考えながら、遠距離介護を8年続けています。そんなことをしていたら、介護者であるわたし自身が限界を迎える前につぶれてしまうのでは?と思うかもしれませんが、わたし自身をしっかり守りつつ、限界値を超えないようしています。

まず認知症の母は、できるだけ住み慣れた自宅で過ごしたいという思いがあります。その思いを理解しているので、在宅介護の態勢を作っていこう!と。

それに今、介護施設に母を預けたら、見慣れない設備や知らない人に囲まれて、自宅でならできていたことが、一切できなくなると考えています。認知症の更なる進行、生活不活発病へのきっかけになり得るので、わたしも妹も「今は」施設に預ける選択肢はありません。

限界値を超えず、長く在宅介護を続けるためにいつもやっていることは、「命に関わらない小さなことには目をつむる、妥協する、どうにかなる」と考えます。

例えば先日の記事、寝室の横に池を作ったケース。シモ系がきっかけで、介護施設に預ける決断をするご家族はいます。あのニオイや汚れに、自宅ではもうムリ!と感じる方もいるでしょう。わたしは掃除をしながら、キレイにすればまだいけるでしょ!と思っています。

包丁でざっくり指を切って数日放置していたときもゾッとしましたが、だからといって包丁を隠してはいません。

とにかく家に居てできることがあるのなら、それをとことんやってもらう。これが元気で長生きするヒケツだと、なくなった祖母の1年の病院生活を経験して感じたので、それも大きいです。

「もうムリ!」と簡単に思わない、それは決してガマンではありません。細かいことにいちいち目くじらを立てない、汚してもいい、多少ケガしてもいい、じゃないと初めから遠距離で在宅で認知症介護なんてできません。

こういった方針で在宅介護をやっていたとしても、いずれ限界が来るかもしれません。やはり認知症以外の病気がきっかけになるかなと。それでもいけるところまでは、ゆるゆるとしれっとやっていきます。

ゴミ屋敷に近い状態でも、認知症のテストで1桁でも遠距離在宅介護しているご家庭もありますし、本当に限界値は家によって違いますよね。

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8件のコメント

くどひろさんのように在宅介護を続けられるのが、一番の理想だと思います。
お母様も77才とはまだまだ若いし、近くには妹さまもいらっしゃる、何といってもくどひろ様はその道のプロで専門知識をもってらっしゃるから、出来たのではないでしょうか?
その節はスマカメを教えて頂きありがとうございました。
毎日の電話とスマカメでどんなに安心したことか・・・

母は父が亡くなり独居となって7年あまり、私も東京と愛媛と離れ、2,3か月毎に遠距離介護してきましたが、このコロナ禍で帰省できない。
母は私が帰れない寂しさ、不安に認知症が一気に進行したようでした。
最近のこと、薬をいっぺんに飲み、エアコンを30℃にして就寝、冬なのに脱水症で緊急搬送された。(夏も熱中症で度々運ばれていましたが)
色々な問題行動が重なり、もう一人暮らしの限界を感じたのです。
母90才要介護2、私67才、まだ私も介護施設で勤務していますが、もう老々介護かも?(笑)。
そして‥ついに3/4、グループホームに入居した。いや、させたのです。
あんなに一人でも長年住み慣れたこの家がいい、絶対施設なんか入らないといって、気丈に頑張っていた母でした。
母は長年百姓をしていましたから、人一倍、家と土地に愛着をもっていたのです。
ショートステイなら喜んで行っていたので、「今度は違うショートステイに行くのよ」と言って、グループホームに入居させました。
母を騙して入居させた私。
でもどんなに思っても、入居の準備も同席も首都圏に住む私が帰省してすることは許されず、すべてケアマネとヘルパーさんにお任せしました。
話が決まって入居して、この2週間、
「母さん、ごめんね。母さんごめんね・・・」と何千回、何万回とつぶやいたことか。。。
まだまだクリアな所もある母。
分かったら一生私を恨むでしょうね。
週にデイケア4日、訪看1、ヘルパーさん3日と毎日誰かがかかわっていましたが、もう限界を感じたのです。

みかんの花さま

母は若くして認知症を発症している分、90歳で亡くなった認知症の祖母よりも進行が早いです。たまたま8年間はうまくいったけど、この先は正直どうなるか分からないという感じです。

それぞれのご家庭の事情によって、施設の決断は様々ですよね。頂いたコメントも含め、後悔している方、講演会にご参加頂いた方の中にもいらっしゃいます。わたしも祖母を療養型病床に1年預けた後悔が未だにあるので、なんとか母は在宅でという思いが強いかもです。いけるかどうか……。

くどひろさんへ

おはようございます。Voicyのテーマについてです。

家では、キーパーソンについて話し合うことはありませんでしたが、私が連絡係をやっています。日中、ヘルパーさんや病院などとやりとりができるから自然とそうなってしまいました。
コミニュケーション能力は、ないと思います…
介護は始まったばかりで、介護保険の申請と車の免許返納をやりましたが、
周りの方というより父との関係が悪くなってしまいました。
その時は納得して手続きしているのですが、忘れてしまうんですよね。そして、本当は人の手は借りたくない、車の運転も続けたいという感情は残っているのではないかと思います。

くどひろさんは、キーパーソンに向いていると思います。
今後も参考にさせていただきます。

くどひろ様

今、入院中の病院からコメントしています。介護者である私が入院、です。
もともとうつを患っていた私ですが、最近はかなり回復していました。ところが、認知症になり一人暮らしが不安になった母を実家から近くのアパートに呼び寄せて生活を始めて一年、今までほとんどケンカしたこともない仲良しの親子だったのに、認知症の良い対応が出来なくてケンカすることが多くなり、私の方が精神的にかなりしんどくなってしまいました。
とにかく一度母と距離を取るために、休養入院?しました。これからの介護のための入院と位置づけています。

80歳を過ぎてから、見知らぬ土地に引っ越すことは特に認知症の母にとってはマイナスが大きかったようです。くどひろさんのように、見守りカメラなどを使って遠距離介護をすれば良かったと、後から後悔しています。

今から後悔しても仕方ないので、これからしれっと介護出来るように、生活を建て直していきたいと思います。

まあさま

病院からのコメント、ありがとうございます!
認知症介護において、「適度な」距離感はとても大切だと思います。つかず離れずがお互いにとっていいと思っていて、わたしは離れすぎている部分もありますが、それでもバランスをとった介護をしているつもりでいます。ゆっくりゆっくり、しれっとしれっと生活を立て直しつつ、いい距離感を見つけてみてくださいね!

わが家の在宅介護の限界値:寝たきりになったら、ですかねぇ。
家の母(82歳・要介護3)は、自分で食べない、トイレの場所もわからない。トイレのしかたもわからない。自分で着替えられない。家では基本テレビと会話しているだけ、薬も嫌がる。
との状況ですが、週6日デイサービスに通い。好きな歌がTVから流れると、歌ったり踊ったりしています。
家族は平日は仕事で不在ですが、まだ、行けそうです。

あんでぃそりさま

寝たきり、基準としてはありますよね。
亡くなった父は寝たきりでも在宅が成り立ったのですが、認知症はなかったので、条件はいろいろです。
まだ行けそうといえる感じ、とてもステキだと思います!

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか