認知症の母の芯を食った忘れ方について

芯でとらえる

今月行った、ものわすれ外来でのお話です。

医師
調子はどうですか?
いつもと変わりないです

1か月~2か月に1回のペースで、ものわすれ外来を受診していますが、ここ数年は必ずこのやりとりから始まります。

家で母と一緒のわたしからすれば、2019年の母は特に変化があって、一言でいうなら「芯を食った忘れ方が増えた」と言えます。

一般的に「手続き記憶」と呼ばれる、いわゆる体で覚えたこと(りんごの皮をむく、自転車に乗るなど)は記憶が保持され、「意味記憶」は物の名前、人の名前で、手続き記憶の次に保持され、「エピソード記憶」は最近の出来事などの記憶で、エピソード、意味、手続きの順に忘れると言われています。

そして「短期記憶」と呼ばれる、数分から数日の記憶と「長期記憶」と呼ばれる何十年も前の記憶なら、短期記憶から失われるという話も知っているかと思います。

母は「手続き記憶」は、まだ忘れていません。2019年の大きな変化は「意味記憶」を失いつつあることです。母には申し訳なかったのですが、医師の前で自分の名前と住所を漢字で書いてもらいました。

自分の名前や住所は意味記憶のひとつですが、母に試しに書いてもらうと、何やら怪しいことが何度かありました。

診察室ではシャンとしてくれるかな?

少し期待して、自分の名前を書いてもらったのですが、見事に不正解・・・自分でも何かが違う、なんかおかしいと気づいてはいましたが、結局1文字だけ最後まで出てこなくて、医師に正解を教えてもらって、「あぁ~」となりました。

認知症の進行は分かっていても、まぁまぁショックな出来事です。

残されたオプション

多くの人は、80歳以降に認知症を発症します。76歳の母は69歳で発症してますが、まずまず安定したまま、ここまで来たと思います。

大変なこともたくさんありましたが、母もわたしも笑って過ごしていられるのはありがたいことで、長谷川式認知症スケールの点数で測れるものではありません。

こういった芯を食った忘れ方が増えていくのも、当然受け入れる準備はできています。だから、初めて認知症の人と対峙した介護者のように、狼狽することはありません。

ただ、このままスルーでいいかというと、やはり何か抗いたい気持ちは捨てきれません。

そして今回、新たに提示されたイチョウ葉エキスについても、現在調査中です。抗認知症薬の一択でないところがありがたいのですが、選択肢がいよいよ残っていない感じも診察室で受けました。

イチョウ葉エキスについては,認知症やMCI に対する臨床研究 は多数報告されているが,その評価に関する見解は一貫していない.すなわち,それぞれの成分は単独ではMCI に対して十分なエビデンスがあるとはいえないが,本試験では,これらの成分を複合的に組み合わせることによって,各成分が相加または相乗的に作用し認知機能の改善や心理,行動面での改善につながったと推察される.

引用元:http://ninchishou.jp/relays/download/52/102/47/61/?file=/files/libs/61/201903260958141936.pdf

イチョウ葉エキスの本を読みつつ、他の可能性も探してみます。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

私の母は認知症ではないけれど、想像した以上に大変な事が多くて初めての事ばかり。
読んでいて少し泣いてしまいました。
平気なんですけどね。普段は全然平気なんですが、不意打ちでわかる話に出くわすと、、、です。
がんばってください。

ゆみごんさま

コメントありがとうございます!

わたしも平気ですっかり慣れてしまっているので、しれっと介護を続けていきたいと思ってます。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか