介護にも人生にもとにかく「遊び」が大切という話

介護 遊び 余裕

介護も人生も自分の思い通りにいかないということは、よくあることです。

デイサービスに行ってもらおう、お風呂に入ってもらおう、ご飯を食べてもらおう、病院へ連れて行こう、介護していても自分の理想とは程遠い結果になってしまうことは、日常だと思います。

わたしも34歳のときに、父の脳梗塞が原因で、思いもよらぬ方向へ人生の舵を切らないといけなくなりました。

このように、介護も人生も思い通りにいかないときのために常に「遊び」を持っておくことで、イライラしなかったり、落ち着いて行動ができるようになります。

ものわすれ外来へ行く前の時間

ものわすれ外来へ母を連れて行くときは、だいたい午前10時で病院を予約します。

わたしは9時に格安レンタカー屋まで行って、手続きして、家まで戻ります。それでホワイトボードに「9時25分出発 診療所」と書きます。認知症の母はすぐ忘れてしまうので、居間で座っている母の前にそのホワイトボードを置きます。母は何度も確認しながら、出発の準備を自分でします。

9時25分になって「診療所、行くよ!」とわたしが言うと、「あれ、ちょっと待って。メガネがない。」と母は言います。別な日は「あれ、ちょっと、財布がどこか行った」となります。

かなり高い確率で「出発前のもの探し」が始まります。うちはキーファインダーを使って、失くしやすいものに受信機をつけていて、リモコンボタンを押すと「ピーピーピー」となって、すぐ失くしたものが見つかります。ところが、最近は財布の置き場所がトリッキーになってきました。

先日は、台所のお盆とかを入れる縦長の棚の奥に、なぜか財布がありました。ピーピーなっているのに、まさかそこにあるなんて思わないから、10分以上探すことになりました。「どこ、どこでピーピー鳴ってる?」と言いながら、棚という棚を開けまくって、やっとのこと見つけました。

普通なら「どこにやったの!財布!」とつい文句を言い、イライラするこの場面。わたしもいつも優しいわけではないので、たまには文句も言います。しかし、本気で怒ったことはありません・・・なぜか?

本当の出発時間は「9時40分 診療所」だからです。診療所までは車で20分もあれば、到着します。ホワイトボードには、わざと「本当の出発時間 ー 15分」を始めから書いておき、このもの探しの時間も含めていたわけです。この15分が「遊び」です。まだ実は時間あるんだよね~の気持ちが、自分自身の本気の怒りスイッチを入れないのだと思います。

もの探しの必要がない日は、しれっとホワイトボードを「9時40分」に書き換えます。

うまくいったらラッキーの気持ち

おそらく多くの介護者の皆さんが、ショートステイやデイケアへの送り出しのとき、自分の思っているとおりにならなかった経験はあるはずです。「ほら、お迎えが来たよ」と言っても、うまくいかないこともよくあります。

特に介護は自分の想定したとおりに物事は運ばないので、常に「うまくいったらラッキー」程度に考えておいて、何かしらトラブルの1つや2つはあるくらいで考えておく、時間・心の「遊び」が大切なんじゃないかと思います。

自分の人生ですらコントロールできませんから、常に「遊び」を持って介護していると、うまくいかなくて怒ったり、悩んだり、苦しんだり、泣いてしまったりする回数はグッと減るとわたしは思います。自分を守るための「遊び」です。

多くの方はすでに実践していることだと思うのですが、疲れていたり、忙しかったりすると、自然と「遊び」の幅がどんどん狭まってしまうものです。改めて「遊び」の幅を元に戻して、ご自身の気持ちをリフレッシュしていきましょう!

毎日怒ってばかりいたら、疲れますからね。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

「遊び」って大事なんですね。
私は、うまくいかなくて、怒ったり、悩んだり、
苦しんだり、泣いたりするばかりの毎日です。
しめしめと、笑えるようになりたいです。
相手が鬱に迷い込んだ時の「遊び」心ある対応があれば、ぜひ一つ教えてください。m(_ _)m

さゆさま

わたしも会社員時代、鬱のチームメンバー2人と接するときに、とにかくいつも通り、普通に接することが大切と知り、そればかり意識していたことを思い出しました。
意識している時点で「遊び」がなかったんですよね。結局、時が流れ、1人は部署移動。1人は復帰しました。単なる体験談です・・・

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか