認知症介護家族としてメーカーにお願いしたい商品のリニューアルについて

ルル

母が長年愛用している風邪薬を、近所の薬局へ買いに行きました。

母は頑なに『ルル』が自分に合っていると信じているので、プラセボ効果も期待しつつ、常備薬として在庫を切らさないようにしています。

その『ルル』は特別で、近所の薬局でしか取扱いがなく、他のドラッグストアでは売ってません。

薬局の棚にあった『ルル』を、いつもどおり購入しようと思ったら違和感が。前のお客さんが薬選びで悩んでいたので、その時間で『ルル』の最新ラインナップを、スマホでチェックしました。

わたしの違和感は、パッケージの違い。

ネット上では終売になっていて、店員さんも販売終了と。『ルル』は『ルル』でも、若干違う種類の風邪薬を「やむなく」購入することにしました。

なぜ「やむなく」なのか?

ルル
母が愛用していたルル(上)、今回買ったルル(下)

見た目が変わると困る認知症介護

母は、すぐ上の写真の緑色のパッケージの『ルル』がいいと言うので、わざわざその薬局で購入していたのです。

今は認知症の症状が進行しているので、ここまでパッケージが似ていれば、おそらくバレないと思います。しかし、商品が大幅にリニューアルされると、全く別物という認識になります。

先日、花王の定番シャンプー『メリット』の話をブログに書いたのですが、母の記憶では、新ボトルの『メリット』は『メリット』ではありません。あのエメラルドグリーンのボトルでないと、母は『メリット』とは認識してくれません。(字は読めますが、パッと見の印象で判断する)

メリットシャンプー
新ボトルのメリットシャンプー

同じく花王の洗剤『アタック』。消臭ストロングシリーズを使っていますが、どうやら粉末洗剤は終売となり、液体洗剤のみの販売となりました。母の記憶の中では「洗剤は粉」と決まっているので、液体洗剤は使ってもらえません。

認知症の母の生活の自立を促す

こういった日用品の小さな変化は、認知症の母にとっては大きな変化で、下手すると母の自立を奪ってしまいます。

なので、昔からある定番商品に囲まれながら、母が知っている、分かっているもので埋め尽くすことが、母の自立や精神的安定につながると考えています。

メーカーも売上や利益を追求しなければならないので、商品のリニューアル、パッケージ変更は必然です。わたしも会社員時代は、そういう立場で仕事をしていたので、商品の新陳代謝の必然性は痛いほど分かります。

ただ、これから認知症の方が増えていく世の中において、昔からの定番商品であったり、復刻版パッケージの活用は有効かも と、今回の『ルル』購入の際に思いました。

「詰め替え」が有効!

商品が変わったり、パッケージが変わったりして、認知症の人がその商品を使ってくれなくなるケースが、日本全体でどのくらいあるか分かりません。うちだけの話かもしれません。

また、メーカーも認知症の人のために、パッケージを変更しないようになるとは思えません。そこで介護家族が自衛する方法は『詰め替え』です。

母にMCTオイルを摂取してもらっているのですが、あるボトルに入ったままだと、母はその油を使ってくれません。なので、わざわざ詰め替えをして、母にしれっと油を摂取してもらっています。

うちの認知症介護にとって、商品リニューアルは割と大きなダメージになります。「これ、使わなくなってしまったらどうしよう」まずわたしが考えることです。

古い商品自体を在庫としてメーカーが抱えるのは厳しいので、 懐かしいパッケージやボトルだけでも少し取っておいてもらえると、認知症介護という視点ではとても助かります。自分で取っておけという話もありますね、メルカリでも売っているのかな?

『ルル』を購入後、自宅に帰っていつもの場所に常備し、わたしの役割は無事完了。台所で食器の整理をしていたら、なくなったはずの『ルル』の箱が!

パッケージの違いが際立つことになるので、新しい『ルル』は在庫が切れてから使います。しかし、台所に風邪薬を片付けるとは思わなかったな~

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか