認知症の母がひとりで作った料理への不安と健康への影響

先日、訪問リハビリの作業療法士さんから電話がありました。

作業療法士

お母さまの血圧が190になって、心配で。

半年前に血圧が170を超える話をブログに書いたばかりですが、190となるとかなり心配です。
とはいえ前回高血圧が気になったとき、かかりつけ医に相談したら薬でどうこうするのではなく様子見となりました。次回の受診の際に、またこの話をするつもりです。

ただこの電話をもらう直前に、認知症介護的に頭を悩ますある出来事があって、それも高血圧の原因の一つになり得ると思ったので、今日はその話をします。

重度の認知症の母がひとりで作った料理

母はめちゃくちゃ料理が得意な人でしたが、認知症が進行した今は料理ができなくなってしまいました。しかし頭の中では全盛期のイメージのままで、ヘルパーさんや私が料理をしていても、自分が料理していると思っています。

ある日のことです。母の様子を見守るために、わたしはスマートフォンで岩手の実家の台所の様子を確認しました。すると母が、ちょうど夕ご飯の準備をするところでした。

このちょっと前に、カメラで確認したときには夕ご飯の様子が映っていたので、おそらく食べたことを忘れて、また準備したのだと思います。過食も高血圧の要因のひとつではないかと。母が準備する2回目の夕食を、ずっとライブ映像で見ていたところ、こんな夕食を作っていました。

  1. 生のうどんを袋から取り出し、皿の上にそのまま乗せる
  2. 冷蔵庫にあった味の付いた甘い揚げを、うどんの上にそのまま乗せる
  3. 冷蔵庫にあったちくわを、うどんの上にそのまま乗せる
  4. 近くにあったしょうゆを3回くるくる回して味付け
  5. 電子レンジに入れてチン(時間はてきとう、1分くらい)
  6. 最後にコーヒーに入れるグラニュー糖を掛けて、完成

母が一から料理する姿を見たのは久しぶりでしたが、過食でヘルパーさんが用意した料理も、次の分の食事も全部食べてしまうと、料理を作って食べてしまうのかもしれません。

一口食べてまずいと感じて、そのまま食べるのをやめてくれ!と画面越しに期待したのですが、何食わぬ顔をして黙々と食べる母の姿を見て、改めて認知症の進行を感じました。

とはいえ食べられる食材のみで料理しているし、ものすごくポジティブに考えれば生醤油の生うどんとも考えられます。これだけでもゾッとしたのですが翌朝、また母が朝食を準備し始めました。料理の手順は次のとおりです。

  1. 鍋にわずかな水を入れる(たくさん水を入れると、重くて持てないから)
  2. 冷蔵庫にあった豆腐をそのまま投入し、煮ながら混ぜる
  3. 近くにあったしょうゆを3回くるくる回して完成

これで完成なら、湯豆腐に近いものと思えなくもないです。しかしこのあと、前日同様最後にグラニュー糖を大さじで4杯掛けました。

豆腐も一丁入れてしまったので、お皿いっぱいにぐちゃぐちゃに盛られていました。途中でまずいと思ってくれないかなと思ってカメラで見ていたのですが、半分くらいは食べてました。

母の行動を電話で止められるといいのですが、一時的には止められても冷蔵庫に保管して、翌日に食べてしまいます。これが遠距離介護の限界でもあります。

料理の対策を実施した

過食対策のため、極力冷蔵庫には食材を置かないようにしてます。ガスも危険と思われるかもしれませんが、離れたら自動消火するので鍋は焦げてません。ただグラニュー糖をあんなに使うとは思っていなかったので、妹にお願いして母の見えないところに片づけました。

以前は自分でコーヒーを淹れて飲んでいたので残していたのですが、先日母がわたしにコーヒーを淹れてくれるというので、お願いして黙って見ていたところ、

  1. コーヒーカップに水を入れる
  2. グラニュー糖を大さじ3杯、①に入れる
  3. レンジでチンして完成

肝心のコーヒーを入れてないので、温かい砂糖水が完成しました。共通しているのはグラニュー糖をやたら使うところです。

食事については宅配弁当の利用や、デイサービスの日数を増やすなど、様々な選択肢を検討中です。こちらに関しては後日ブログの記事にしますが、いろいろテストを始めます。

今回のブログ記事もまた母の行動を制限する話になりましたが、高血圧が悪化して、健康に悪影響を及ぼす可能性が高いのでやむを得ないと思ってます。

先日冷蔵庫ロックを試したところですが、母が大量に使ったり、直接食べたりしそうな調味料は母の手の届かないところかロックの中に入れるしかなさそうです。冷蔵庫ロックはお試しで使っていましたが、今回の1件を機にしっかり活用していきます。

音声配信voicyの最新回は、たくさん頂いたコメントに音声で返信してます↓

今日もしれっと、しれっと。


にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

6件のコメント

いつも、とてもとても参考にさせて頂いております。先日の幸手市講演会でお声をかけさせて頂きました、要介護2の実母を近距離中のものです。
食は健康の源。料理の意欲を削いでしまうのは残念ですが、、高血圧はご心配ですね。ご参考までですが、
我が家では砂糖の代わりに、エリスリトールを砂糖入れに「しれっと」入れております。味はラカントの方がよいのですが砂糖とは色が違い抵抗ありそうで、エリスリトールにしています。

伊藤さま

幸手市講演会へのご参加、ありがとうございます!
なるほど、そういう手がありますね。うちの場合はエリスリトールの大量摂取の可能性があるのですが、いい工夫ですよね。中身を入れ替える発想、他でも使えそうです。

いつも微笑ましく思いながら拝読させて頂いております。
私の母もほぼ同じレベルの認知症です。
朝のコーヒーとパンだけは自分で何とか出来ていましたが、ヨーグルトをジャムと思い込んでパンに塗ったり、その反対もあります。
手でジャムを塗ってる日も…。
コーヒーは、お母様と同じく全ての材料を入れるのが難しくなり、でもコーヒー位は自分でやらせたい気持ちでスティックタイプの物に変えた所、何とこれがうまくいきました。
結果、家から砂糖は消えました。
他の料理は作った物を持ってくる&デイじゃない日のお昼は宅配弁当なので、可能だったのかもです。
ちなみに宅配弁当が来る時間を把握出来ないので、見守りカメラの音声通話で『お弁当でーす』と配達員のふりをして呼びかけて玄関に取りに行くよう促しておりました。
ご参考程度にして頂けると嬉しいです。
これからもブログを通じて見守らせて下さいませ。

カジハラさま

スティックコーヒーのアイデア、いいですね。認知症がここまで進行する前に仕込んでおけばよかったなと思いました。見守りカメラの声掛けも、めっちゃいいですね。最高です! 絶対どこかで応用できる気がします、ありがとうございます!

こんにちは
高血圧はご心配ですね
義父も血圧が高いのですが、新築の暖かい家に引越してからお薬は変わってないのに落ち着きました、
岩手の春との訪れと共に血圧が落ち着いてくれたら良いのですが。
調味料のかけすぎ、うちの義父母もそうです
要支援一の義母のほうがひどくて
一度かけたことを忘れてまたかけます
嫁ゆえ強く言えないのが辛いところです
かなり塩辛いはずなのに平気で食べてます
困ったものですねー。

ねこのくつしたさま

ブログにもコメント、ありがとうございます!
ネタ元は同じですが、可能な限りvoicyとネタを分けるようにブログを運営しております。
血圧の数値として出たので、うちは撤去してしまいました。数値が落ち着くといいのですが……。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか