認知症の母のために買った寒い冬を暖かく過ごすためのあるものに苦戦中

ニトリのふとん

今年の夏に、「 在宅介護で築50年以上の古い家の補修はどこまでやるか問題 」という記事を書いた。

エアコンを台所に設置しようとするも、アンペア数を上げる工事が必要で、10万近くかかるため断念したという話だった。

盛岡の冬は寒くて、11月でも朝は氷点下になる。

認知症の母にとって、つらい冬がやってくるが、どうにかして安くて暖かい環境にできないかと考え、とりあえずニトリへ行ってみた。

ニトリで見つけた暖かいもの

母の寝室にはエアコンがない。

夏はあまり日が当たらず過ごしやすいのだが、冬はかなり寒い。

もし電気ストーブや灯油ファンヒーターを置いたら、認知症なので火事の心配もある。

何かいい手はないか・・・ニトリ店内をウロウロしていたところ、目に飛び込んできたものは「ふとん」。

そうか、ふとんの機能性を高めればいいんだ!

母は掛け電気毛布を使用しているので、ふとんの中は暖かい。

ただ、使っている掛けふとんは、亡くなった祖母が手作りでつくったもので、重い割にスカスカしている。いわゆる、せんべいぶとん。

熱なんて逃げていくし、見た目にも寒々しい。そのふとんがこちら。入れ綿も少なくてペタンとしている。

せんべいぶとん

思い入れのあるせんべいぶとんをどうするか

盛岡のCMを見ていたら、ふとんの打ち直しのCMをやっていた。

ふとんを使わない真夏に打ち直して、母にはそれで冬を越してもらおうと思った時期もあった。

それでふとんを確認したのだが、いかにも手作りで縫い方も甘い。これ、本当に打ち直しできるのかと。それで今年の夏に諦め、なんとなく冬が来てニトリにいた。

新しいふとんは機能性が高くていいのだが、亡くなった祖母が作った思い出のふとんも味がある。

そもそも認知症でひとり暮らしの母が、数十年使い続けたふとんから、新しいふとんに切り替えて理解できるかも疑問だった。

そんな経緯もあって、ふとん売り場で腕を組み、ずっと悩んでいた。認知症のことを考え思い出を重視するか、機能性を重視するか・・・

悩んだ末、購入

結局悩みに悩んで、機能性を取った。

思い出を取って、凍え死ぬようなことがあってはならない。

程よく高い「完全二層式・保湿カバー付き 吸湿発熱掛ふとん シングル」という、税込約15000円の商品にした。(記事タイトル下の写真)

機能的には最高で、母には絶対これだろ!と思った。保湿、静電気防止、蓄熱など、「 Nウォームーはあたたかい♪ 」のCMのスーパーバージョンだ。

暖かいし保湿性もあるし、30年以上前のせんべいぶとんの比ではない。

ところが最大の問題があった。

ふとんカバーが、茶色いのだ!

この保湿や保温の機能を高めるには、このふとんカバーでないとだめらしい。カバーだけ変えようかと思ったが、そうはいかない。

わたしも茶色いふとんカバーをみたことがない、まるでコタツぶとんみたいだ。

購入してしまったし、悩んでいてもしょうがないので、母にふとんを買ったことを報告した。

ふとんをしれっと敷いてみる

母は嫌がるのでは?

そう思ってふとんをしれっと敷いて、母に機能の話を説明したら

いいんちぇ、最高だごど

予想外の高評価。

翌朝、ふとんの感想を覚えていないとは思ったけど、試しに聞いてみたら、暖かくていいということだった。本当なのか、取り繕いなのか。

今日の話のポイントは、むしろここから。

次の日は何も言わず、母にふとんを敷いてもらった。

そしたらニトリの茶色くて暖かいふとんではなく、やはりせんべいぶとんが敷かれていた。

まぁ、こうなるわな。

実は、このせんべいぶとんを隠した時期もあった。でも、ふとんがないと大騒ぎになって、東京のわたしに何度も電話してくるかもしれないと思い、元に戻した。

せんべいぶとんで、死ぬわけではない。電気毛布もある。だけど、ニトリの機能的であったかいふとんを使って欲しい。

母は認知症・・・今までの習慣をそう簡単に変えられるものではない。

購入して1か月。現在はどうなっているかというと、母がせんべいふとんを敷いたあと、わたしがニトリのふとんを敷きなおす日々が続いている。

わたしが敷きなおせば、黙ってニトリのふとんに寝てくれる。

これをしばらく続けていれば、いつか茶色い掛ふとんと認識してくれるかもしれないと思っている。

もしダメでも、自分が盛岡に居るときだけ、あったかいニトリふとんで眠ってもらえばいい。

認知症の人に新しい電化製品や日用品を購入しても、なかなか使ってもらえないこともあると本にも書いたのだが、今回もそのとおりの展開になってしまった。

それでもわたしと一緒のときは、あたたかい掛けぶとんで眠れるわけだから、これでいいと思っている。

築50年近く経つ断熱材のないわたしの部屋は、これから地獄のような寒さを迎える。

寝返りを打ち、誤ってふとんから出ると、翌朝には極楽浄土にたどり着く鬼設計になっている。

こんなことで死ぬわけにはいかない。

わたしも母と同じ、Nウォームを買うことにした。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

 ベッドにしたら どうでしょう?布団の上げ下げもなくなるし、寝るのも立ち上がるのもとても楽になります。床に横になり、そこから立ち上がるのは お年寄りにはとても大変な動作なので、お母様 まだまだ身体機能は残していらっしゃるのだと思います。
 ベッドはとにかく床から離れているので 暖かです。東北の冬は本当に寒いですよね!床の寒いこと、たった50㎝高くなるだけでだいぶ違います。引き出しなどがついた70㎝くらいのベッド、高く思えますが低すぎるのより楽です。(この引き出しに色々隠されて翻弄されましたが・・)

トトさま

ベッドありです、将来的に。
元々手足が不自由な母には、あえて楽な道は選ばずに筋力アップのために布団の上げ下げもしてもらってます。

認知症の祖母がベッドから転落して大腿骨骨折をしているので、おそらく低床ベッドになると思います。母も朝起きて、76年の布団の感覚で起き上がって、ベッドから転倒してしまうような気がするので、そこは注意しなければいけないなと思っています。ありがとうございます!

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか