母に3年以上依頼され続け、ずっとスルーしてきたことがある。
わたしが実家にいた頃にはなかったのだが、亡くなった祖母が騙されて買ったのか、あるいは元気に歩き回る認知症の祖母の転落防止のためなのか設置されたのが、20畳分以上はあるウッドデッキ。
1日中、庭ばかり見ている母だから、どうしてもウッドデッキも目に入る。そのウッドデッキの色がはげていて、なんとかして欲しいという訴えだった。
正直やりたくない作業なので、母の依頼をスルーし続けていると今度は、
この母の「やるやる詐欺」の繰り返しが、息子をジワリと追い詰める。
母のイメージでは、ウッドデッキくらいチャチャっと塗れると思っているのだろう。
真夏に作業すると熱中症で死ぬし、真冬は雪が積もって作業にならない。梅雨前の5月、6月がベストシーズンであり、雨が降らない晴天の日を狙って、作業をしなければならない。
それにウッドデッキの着色ではなく、木の防虫、防腐、防カビのほうがメインであって、色はおまけ。デッキは何もしないと木が朽ちてくるし、すでに端のほうが朽ちているところもある。
塗料、ローラー、ウエス、はけを準備し、1日から2日かけて20畳を塗る。本当に重労働で、手がしびれ、腰も痛くなるから、正直やりたくない。
母は悪気もなく「わたしが塗る」と何度も何度も言うのだが、認知症で手足の不自由な母には準備も作業もムリだし、何度も繰り返し言われることで、自然と息子にプレッシャーを与えている。
「わたしが塗る」と3年も言われ続けると、聞いてるわたしも当然疲れてくる。父の介護も終わって少し落ち着いたので、重い腰を上げ、今年ウッドデッキを塗ることにした。
ウッドデッキの作業に起こったハプニング
いつもの木材保護塗料を買いに、近所のホームセンターへ。
しかし塗料の取扱いがなく、やむを得ずAmazonで購入したら、3.5kg缶が広島から盛岡に届いた。
母がいるといろいろ面倒なことになるので、デイサービスへ行った日にデッキを塗ることに。しかしデイの日が雨予報で、やむを得ず翌日に延期した。
朝8時、涼しい朝のうちから、デッキ塗りはスタート。ローラーで塗ったら早いと思ったのに、木目がザラザラで塗料が染みこまない。デッキのやすり掛けは面倒なので、重労働だがはけを使って塗り込むことにした。
しばらくすると、母が声をかけてきて
わたしの著書「がんばりすぎずにしれっと認知症介護(新日本出版社)」には、わたしが庭の剪定をしたときの母とのほっこりエピソードが書いてあるのだが、今回はそうではなかった。
認知症が進行している母は、何度も何度も「二度塗りするの?」と話しかけてくる。だからデイの日に作業したかったのだが、遠距離介護で滞在日数が限られているから、やむを得ない。4時間塗っても終わらないので、一旦お昼にすることに。
昼食後もデッキ塗りをしていると、背中に冷たいものが。晴れの天気予報だったのに、なんと雨が降ってきた。よりによって、何で今日雨ふる?
塗料をバケツに入れてしまったので、塗料は使い切りたい。なので、雨が上がるのを待って再開。それほど雨は降らなかった。
4時間経ち、腰は痛いし、手の力が入らないので、午後は少し塗ってすぐ休憩の繰り返しになってしまった。休憩中、近所の猫がニャーといって、塗料の上をタタタッツと駆け抜けた。
「あーー、お、おい! 」
といったところで、猫を止められるはずもなく、足跡がついてないかチェックしたが、足跡はついておらずホッとする。
すると今度は、母が塗料の上をハイハイしだした。
「ちょ、ちょっと!ダメ!塗ったばっかりなんだから!」
母はわたしが置いた靴やウエスの場所が気になって、塗りたて塗料の上をハイハイしてしまった。
母は注意してもすぐ忘れるので、得意の張り紙「このままにしておいて」を設置して、デッキへの侵入を阻止。
作業を一旦中断して、母の手についた塗料を洗ってもらう。ひざに塗料がついていないかチェックしたが、大声で叫んだおかげか、それほどでもなかった。
わたしがデッキ塗りしていた姿を何時間も見ておきながら、しれっとそのエリアに入っちゃうんだな・・・しれっと介護の本を書いたときより、母の認知症が進行しているなと実感。
猫や母に邪魔されながらも、6時間以上かかって作業はなんとか終了。そして、全身筋肉痛。
デッキを塗ったあとの母の反応が気になったのだが、まさかの無反応。デッキがはげていると気になるようだが、きれいだと何の反応も示さないようだ。
3年もお待たせしてしまったが、やっと完成しました!塗り終わった写真がこちら。
左上隅だけ塗料が足りなかったことは、内緒で。
今日もしれっと、しれっと。
くどひろさん おはようございます!
せつない話でコメントすることありますが、今日は「ほっこり」ですわ~お母様のハイハイ、ペンキ塗りにお約束かのように現れた猫に雨!十分にがんばる介護ですよ~
お疲れ様でした。
函館の女さま
おはようございます、ありがとうございます!
とりあえず終わったので、ホッとしております。
なかなかの大仕事お疲れ様でした。読んでいる間、なんたか自分もこの大変な現場にいさせて頂いているような、いい意味での疲労感や、やりきった感を味わえました。このエネルギーうらやましいです。
南の9月さま
文章で現場にいる感じが伝えられて、うれしいです。
ありがとうございます!