認知症の母が寝る直前にやるルーティーン

わたしが夜、自分の部屋に戻って仕事を始めたあとの認知症の母の行動の話です。

わたしが「おやすみ」と母に言うと、母は「それじゃ、寝よっかな」と必ず言います。本当にそのまますんなり寝る日もありますが、6割近くの確率ですぐには寝ません。いったい、何をしているのでしょう?

母の寝る直前のルーティーン

たまたま仕事に取り掛かる前に、寝る前の母の様子を見守りカメラで見る機会がありました。そしたら母の寝る前の行動は、たまたまではなくルーティーンのようになっていたのです。

夕食後、2時間くらい母と一緒に居間でテレビを見ますが、ずっと座りっぱなしです。就寝前に寝室までの移動のために立ち上がりますが、立ち上がりが不自由だから立ったついでにいろんなことをやってしまう習性があります。

まず居間の電気を消し、台所の電気をつけたあとで炊飯器を開けます。朝はパンなので、中身は空です。お米は隠してある(詳細は下記記事を参照)ので、お米は研げません。

次に冷蔵庫を開けます。過食対策をしている冷蔵庫の中はあまり食材が入ってないのですが、母は数少ない食材を上段から下段に移したり、また下段から上段に戻したり、整理整頓を繰り返します。冷蔵庫の警告音がピーピーなっていても、ずっと整理をします。

冷蔵庫が終わったら、台所の拭き掃除を始めます。台所の水しぶきは徹底的にキレイにする母なので、念入りに拭きます。拭き終わると冷蔵庫に戻り、整理整頓をやり直して、また炊飯器を開けて拭き掃除をやります。

拭き掃除は、最初は台拭きで行います。ずっと台拭きを使ってくれれば何の問題もないのですが、冷蔵庫の整理が終わって2回目の拭き掃除のときは手を拭くタオルが台拭きになります。3回目の台拭きは、食器拭きタオルが台拭きに変わります。

朝起きて、台所にあるタオルすべてが水を含んだ状態になっているのは、この台所掃除が原因です。こうした母の動きはすべて、見守りカメラを見ていてわかったことです。

行動パターンが分かっていても止めない理由

冷蔵庫の警告音がずっと鳴っているときは、2階の自分の部屋から1階に行って「はいはい寝ましょう」って母に言います。しかしほとんどのケースは、母のリハビリだと思ってガマンしてます。

台所の周りをウロウロして歩くことも運動、冷蔵庫の扉を支えにして自分の力で立つのも運動、拭き掃除も運動です。長いときで30分くらいこのルーティーンを繰り返すこともありますが、外を歩く機会がめっきり減っているので、とにかくガマンしてます。

本当は自分の力で翌朝の朝食の準備をしたいけど、どの材料を冷蔵庫から出して、何を準備したらいいか分からないから、こうした行動になっているかも? と推測しています。

わたしが準備した朝食用の食パン、皿2枚、箸2膳は台所のテーブルの上にあります。母はそれを見て息子が盛岡に居ることに気づき、そして自分が母親として朝食の準備をしないといけないスイッチが入るようです。その気持ちは痛いほど伝わってきます。

でも何をしたらいいか分からないから、寝る前にウロウロするんだろうなと思ってみています。立って歩いて動けるうちが華なので、就寝直前に運動をしてぐっすり寝てもらいましょう!

音声配信voicyの最新回は、デイサービスへの送り出しについて語ってます。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか