入院手続きで改めて感じた認知症の母がひとりで生活できる奇跡

内視鏡

2018年10月、75歳の母が人生初の大腸内視鏡検査を受けました。(元記事:認知症の母が大腸内視鏡検査を受けるまでとその結果

2リットルもの下剤を飲んだ母とわたしの奮闘記が、元記事にはめいっぱい書いてあるので、良かったら読んでみてください。ギャーってなります。

検査結果は良質なポリープが4個あり、うち1個は5mm以上の大きさでした。5年から10年経てばガン化する可能性があるし、何より女性のがん死因1位は大腸がんです。

何年か待ってもいいと医師に言われたのですが、母の認知症が進行すると手術はもっと大変になるし、ポリープがあるのに何もしないで、予想以上に早くがん化したら嫌だなと思い、なるはやで手術を受けてもらおうと。

ところが、わたしの時間が取れない!昨年12月の新刊の最後の追い込みや、発売後も忙しくて、自分の時間がとれるGW前後に手術の手続きをしようと思っていました。

病院の紹介状を取りに消化器内科へ

検査を受けた消化器クリニックの医師からは、入院する意思が固まったら、家族だけで来院してもいいよと言われていたので、母に了承を取って、1人で病院へ。

改めてポリープの説明を受け、手術する病院の受診予約を取ってもらったら、6月頭になったので、今度は紹介状を持って、母と一緒にその病院へ行きました。

医師から大腸ポリープ切除術、粘膜切除術の手術の説明を受けました。その後、血液検査、X線撮影、心電図の検査のため、手足の不自由な母を連れて院内1階、2階の3か所を移動。

病院の床と相性が悪く、母の足が引っかかり何度も転びそうに。車椅子の選択もあったけど、母の足のリハビリにもなるので、必死の歩行介助をしたのですが、いつもの2倍の力で母を支えたので、わたしの右腕は悲鳴をあげていました。

途中トイレに行きたいというので、近くの職員さんに「女子トイレは洋式ですか」と質問。和式はしゃがめず、ズボンを濡らして出てきたことがあったためです。(元記事:認知症の経過報告(1年と47週・48週間目)・おしっこで濡れた母をおんぶした日

1個だけ洋式があると言われ、そこまで女性職員さんが母を誘導してくれて、わたしは女子トイレ入口で、母を待ち構えます。男性介護者は、こういう時に苦労します。

検査が終わり、最後に入院の説明です。前回の大腸内視鏡検査では、母の便がコントロールできず、看護師さんに迷惑をかけてしまったので、それを繰り返さないよう、前回あった問題点をすべて話しました。

1泊2日という選択もありましたが、腸内をきれいにするプロセスで普通より苦戦しそうなことから、2泊3日の入院が決まりました。

認知症の人のための入院説明

入院申込書に「アルツハイマー型認知症」と書いたところ、別紙で母の生活レベルがどのくらいかを求められました。

  • ナースコールボタンを押せる(×)
  • 医師の説明が理解できる(×)
  • ひとりでトイレに行く(×)
  • お薬をひとりで飲める(×)
  • 洗顔や歯みがきができる(×)
  • 食事はひとりで食べられる(〇)
  • 夜中に大声を出す(×)
  • 尿失禁がある(〇)
  • 病院内を歩き回る(×)
  • 暴言を吐く(×)
  • 自分の居場所が分かる(×)

家ではひとりで暮らせている母も、病院という新しい環境では、おそらく何もできないとわたしは思いました。すべてサポートが必要です。

自分がどこにいて、なぜ入院して、ベッドで寝ているのか、下剤対策のオムツをなぜしているのか、理解できないはずです。

だからナースコールも押せない、トイレの場所も分からない、洗面台の場所まで歩くことも、お薬を飲むタイミングも分からないはずです。医師から手術や病状の説明があっても、すぐ忘れます。

認知症の人が入院をきっかけに症状が悪化するという話はよく聞きますが、あらためて入院の書類に×をつけるたびに、母はひとりで何もできないんだなとリアルに実感したのです。

これが長期化したら、認知症の症状も絶対悪化するなと。2泊3日でよかったなと。

母が認知症でもひとりで暮らせている理由は、「40年以上過ごしてきた」家だからです。壁伝いに歩くときの壁やドアの位置、トイレの場所、洗面台など、記憶ではなく、体が勝手に覚えているから、自立した生活を送ることができるのです。

看護師さんの質問とは関係ないことを、ひたすらしゃべっていた母ですが、すべての問診票に「アルツハイマー型認知症」と書いたので、すぐ察してくれました。それっぽく、質問を理解しているように取り繕うんですよね。

今回の入院の最大の山場は、初日夜の下剤を飲んだあと、そして2日目の朝の2リットルの下剤を飲むこと、手術後の下剤の余韻で出る便です。母は下剤の感覚が分からないので、トイレに座りっぱなしで排便するのが理想ですが、その環境が整うかどうか。手術自体ではなく、便と認知症のほうが心配です。

母はショートステイを利用したことがないので、入院をショートのような気分でなんとか2泊3日を乗り切って、また自宅で元気にひとりで生活して欲しいです。

わたしの役割はここまで。入院の付き添いは、妹に引き継ぎます。

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか