認知症の母に睡眠薬を使って気づいた怖さと誤解|「眠らせられる」感覚にゾクッとした

介護の悩みが「失禁」から「睡眠」へ

認知症介護の悩みは、変化し続けます。最近のわたしのテーマは、失禁から睡眠へ変わりました。

母は布団に入ったと思いきや、朝5時まで布団を畳んだり、シーツを触り続けたりして、なかなか寝てくれません。そのままデイサービスへ向かい、日中に昼寝をして帰ってくる——そんなサイクルが続き、昼夜逆転が起きやすい環境が続いていました。

見守りをするわたし自身も、母が寝室の扉を開けるたびにスマホへ通知が届く見守りカメラの設定にしていて、寝ぼけながらカメラ越しに「夜中だよ、寝てー」と声をかける日々。うまくいく日もあれば、朝まで母もわたしも眠れない日もありました。

こうした状況をかかりつけ医に相談したところ、初めて睡眠薬が処方されました。そのときのブログ記事はこちらになります。

4種類の睡眠薬

睡眠薬は、下記の4種類にわかれます。

  • ベンゾジアゼピン系睡眠薬
  • 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
  • オレキシン受容体拮抗薬
  • メラトニン受容体作動薬

上にいくほど入眠作用が強く、ふらつきや転倒リスクが高まります。母に処方されたのは、メラトニン受容体作動薬『ロゼレム』。依存性や常習性はなく、睡眠薬の中でも効き目はマイルド。自然な眠りを促しつつ、睡眠と覚醒のリズムを作ります。しかも通常より少ない、微量での処方でした。

実際5日間試したところ、最初は30分ですぐに眠くなりました。3日目からは慣れてきて、60分ほどで入眠。ロゼレムを飲んだ母をトイレに誘導しましたが、足取りも問題なく、ふらつきもなし。翌朝の持ち越しもありませんでした。

そして夜間の中途覚醒は見事になくなって、マイルドなうえに微量の処方でも効果があることに驚きでした。わたしも母も眠れるようになったのです。同時に「医師が何も考えずに、まるっと1錠処方する人だったらどうなっていただろう」と、少し怖くなりました。

病院や介護施設で起こる睡眠薬の事故

訪問看護師さんとこの話をしたところ、病院では薬の持ち越し、翌朝になっても眠気が残って、足元がふらつく患者さんがいたそうです。

他にも入院して認知症になったと思ったら、実は睡眠薬によるせん妄で、退院したら回復したなんてケースもあります。

介護家族としては、病院や介護施設で「睡眠薬を使います」と言われたとき、どの種類なのか、どれくらいの量なのか、転倒対策はされているかを確認したほうがいいと思います。

病院や施設に任せきりにせずに、家族も積極的に関わる姿勢を見せることで、転倒や骨折といった事故の予防につながります。

睡眠権を握ったような感覚にゾクッとした

母がロゼレムを飲めば、60分後に眠くなる。

この事実がわかったとき、不思議な感覚になりました。具体的には介護に困ったとき疲れたときに、使えてしまうという感覚です。もちろん、そんな使い方はしません。

でも、夜間に人手が足りない介護施設や病院で、スタッフが追い詰められた末に睡眠薬が使われてしまうケースがある。転倒や骨折、夜中に施設内をウロウロするのを防ぐために。——そう想像すると、ゾクッとしました。

睡眠薬を「問題を解決する手段」としてではなく、「本人の睡眠を整えるサポート」として使えるかどうかです。介護する家族も、その視点を忘れてはいけないと感じています。

わたしが東京に帰った翌日。ロゼレムを飲まずに寝たら、母は寝室にポータブルトイレの処理袋を一晩中並べて、就寝したのは朝5時でした。2時間の睡眠でデイに行ったので、東京からメールでデイに状況を伝えました。

「睡眠薬を飲んだらダメ」といった大きな誤解があったと気づいた一方で、深く考えずに使えば大変なことになるとも理解しました。今後も警戒しながら、睡眠薬とはうまく付き合っていくつもりです。

今日もしれっと、しれっと。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(82歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて14年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【著書】
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